* Scent.6 *

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「キス、したい……。もっと、たくさん……キスしてたい」 ちゅっ、と白い肌を吸い上げていた涼風は、立花の呟きに気付いて今度は唇にキスを落とした。 舌を絡ませ合い、立花の狭く熱い口内を何度も行き交わせながら貪った。 しばらくそうしていると擦れあって腫れぼったくなる。 涼風は困った顔をしてちょっと待ってね、と夢中で唇をくっつける立花をかわした。 それでも立花は唇を尖らせて、キスをねだる。 これでは当分の間項を噛めない。困った、と涼風は笑った。 体勢を変えて再び立花を抱こうとしたとき、涼風は眉間に皺を寄せる。 彼の視線が一瞬だけ立花のほうを離れて、包帯の巻かれている手の甲へ移ったのを見逃さなかった。 抑制剤の効果が切れた立花と2人きりになったときに、不本意にヒートを迎えた彼がどうにか理性を繋ぐために自傷したものだ。 落ち度は自分のほうにあるのに、結果的に涼風を傷つけしまった。 痛みが伝わってきて泣きそうな顔をしている立花に、「大丈夫だよ」と涼風は気遣う。 「その……僕が動きます。……上手く出来るかは、分からないけど」 「立花君こそ辛いだろう。ひびはもうほとんど繋がってるんだよ。……激しくしたから、痛んだかな」 恐らく本気で辱しめている訳ではないのだろうけれど、「激しくしたから」なんて聞くと、顔が一気に火照る。
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