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残り30分のシフトを消化した後、店内で待ってくれている涼風の元へ向かう。
横柄な態度で、立花だけでなく他のスタッフも、あの客の対応には手を焼いていたという。
それを颯爽と現れた涼風が、特に大きなトラブルもなく追い返してしまった。
そして、親しげに話している様子も見られてしまったため、立花は涼風を恋人で番であると話した。
男の恋人がいると、立花の指導係にあたる小柴だけに打ち明けていたのだ。
同性同士の番……第2の性の登場により、性のあり方は多様化し、偏見は薄くなったが、一部はそれを快く思っていない人もいる。
別にその事情を表に出さなければ、他人に嫌な思いをさせることもないし、自分だって傷つかない。
そう思い込んでいたのに、この町の人は優しい。
祝福の言葉をもらい、何だか気恥ずかしくなってしまった。
比較的客の空いている時間だからいいよと言われて、立花達は奥の席を使っている。
「さっきはありがとうございました」
「他には何もされてなかった? 謝らせる前に逃げられたからな……」
「助けてくれたことも、なんですけれど。その、僕もかっとなって水をかけようとしたから……」
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