* Scent.7 *

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「大きい病院が採用品目を一気に変えることなんてよくある話だ。遅かれ早かれ、仁居が不正に関わったことはいずれ監査が入って素っ破抜かれる。そもそも、仁居は利益重視の経営だったって後々になって分かったし、うちとは合わなかった」 「ええ、とね。福井が何を言いたいのかっていうと、立花君と共同研究が中止になった件は一切関係ないから、気にする必要はないってこと。俺と福井がよく下調べもせずに、不健全なところにうちの研究を預けようとしただけ。多分、仁居先生とは途中で折りが合わなくてバラバラになっていたと思う」 立花は半信半疑の目で2人を交互に見た。 涼風も福井もお互いを、そして立花も責めようとしなかった。 自暴自棄になっているふうでもなく、顛末を語り合う。 「……僕に、何か出来ることはないんでしょうか」 「そう思うならこれからも郁を支えてやってくれ。研究馬鹿に倒れられたら困る。うちのチームのリーダーだからな」 「研究馬鹿って何だよ」 涼風は眼鏡のブリッジに手をあて、照れくさそうな表情を隠した。 立花のほうを改めて見ると、「ありがとう」と囁く。
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