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弱いところを突かれ、涼風はう、と眉を潜めて苦い顔をした。
同じ屋根の下で暮らしていてもお互いに仕事があるから、顔を合わせるのは1日のうちで半分もない。
しかも帰りが遅くなるときは、立花が先にベッドで寝入っていることもある。
──寂しい、って言ったら、困らせるかな……。
以前はそうやって気持ちを押し込めたから、涼風とは1度すれ違ってしまった。
あんな苦しい思いはしたくない。
立花が途方のない我が儘を言ったとしても、きっと涼風は面倒くさいだとか嫌になっただとかは口にしないのだろう。
ちょっと困ったように笑うだけ。
「次の土曜日と日曜日、続けて休みが取れそうなんだ。立花君も仕事はないだろう。どこか遠くにでも行こうか」
ふてくされていた立花は、その言葉を聞いて瞳をきらきらと輝かせた。
「旅行でもいいけど、お家で涼風さんと過ごしたい。映画を観たりお昼寝したりゲームしたり……」
「……遠慮してる? それとも具合悪い?」
「違うんです。お休みだから、ゆっくり贅沢に過ごしたいなー……って。……ダメですか?」
「ゆっくり贅沢に、っていいね。じゃあ贅沢に映画とゲーム、たくさん買いに行こうか」
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