* Scent.7 *

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悪巧みしている子供みたいに、茶目っ気たっぷりにそう言うものだから、何だかおかしかった。 涼風は気になっていたというタイトルを挙げて、立花に提案する。 家には「またいつか」と購入したものの封さえ破らずに積んでいるものもある。 新たに買うものと合わせれば、とても2日では消化しきれない。 「それはまた今度に」と一部を却下した。 2人でやりたいことは、まだまだたくさんあるし、時間だって足りない。 たまの休日でも、涼風は1時間だけ多く寝て、後は読書をしたり立花の用事に付き合ってくれる。 だらだら寝たりぼーっとしているところを見た記憶がない。 だから、今週末ちょっと自堕落な生活へ誘ってしまい、少し申し訳ない気持ちにもなる。 防波堤を歩いていると、大きな水鳥が急に降り立ってきて、立花の行く道を防いだ。 立花の身長よりも尺寸のある立派な2枚の羽を拡げるものだから、驚いてバランスを崩してしまった。 さすがに転げ落ちたりはしなかったが、立花は弾みで防波堤から飛び降りた。 着地の衝撃が少なかったのは、涼風が上手く立花の身体を受け止めてくれたからだ。 「……心臓に悪いな。ほら、ちゃんと隣を歩いて」 「ごめんなさい……」
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