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あなたへ
今日はあなたのお誕生日ね。おめでとう。
こうやって、手紙を書くのは初めてかもしれませんね。
あなたに出会って、もう5年になるでしょうか。毎日、あなたの笑顔を見られることが私の幸せです。本当にありがとう。
そして、これからの、あなたと私の人生がより実りあるものになるようになりますように。
PS そのためにも、要らないものは早く捨てましょうね笑
10月7日 佐藤希
「この手紙はあなた宛に来たものでしょうか?」
薄暗いマンションの一室。どことなく息苦しさを感じる室内にひとりの男性と複数の警察官。
そのひとりが、男性に尋ねる。
「はい。……多分そうだと思い、ます……」
男性の返事はぎこちない。
「佐藤希という人物に心当たりは?」
「多分なんですけど……よく行くコンビニの……レジの人かと」
男性は記憶を掘り起こすように、目を閉じ眉間にシワを寄せながら警察官の問いに静かに答える。
「それ以外に面識は?」
警察官は淡々と質問を投げつける。男性は、肩を落とし、目頭を押さえながらため息をつく。
「コンビニで見かけるだけです。話したこともありません」
男性は堪えきれずに、わっと泣き出した。
「では、奥様を殺害された動機に心当たりは?」
「ある訳ないじゃないですか!!!」
「今回のこのストーカー殺人事件ですが、男性が帰宅すると妻が血を流して倒れていたという凄惨なもので、男性が通勤前に利用していたコンビニの店員の女が、この男性に一方的な好意を持ち、男性の妻を邪魔に思い犯行に及んだ、という卑劣なものです。コンビニ店員の女は(あの人は私に毎日のように会いに来てくれてたわ。彼もあの女より私が良かったのよ!)と、妄言めいたことを語っており、原因究明が急がれます。現場からは以上です!」
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