なんてったって

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「ホントよねー」 「キヨちゃんは仁ちゃんとは話したの?」 「お父さん? 私がお父さんと話すには1台買わなきゃならないからさ、5万はちょっと高いじゃん。だからおばあちゃんに代弁してもらってる」  山脇はお茶をすすりながらウンウンと頷き、何かを思い出したように急にひょっとこみたいに目を丸くして口を尖らせる表情をした。 「そういえばよッ、今の首相は汚ねぇよなッ。4〜50年前に亡くなったあの人気者の田端首相を呼び出して政策を相談してるっていうじゃんか。何でも自分が幼稚園くらいのときに一度会ってるからって、そんなのも接点のうちに入っちまうんだなー」 「田端首相は今の時代知らないのに相談になるのかしらね」 「全くだよ。早く解散しちまえばいいのに」  玄関口のほうでギィーっとドアが開く音がしてみしみしと床を歩く音が聞こえる。 「あ、おばあちゃんかな」 「ハルちゃーん。お邪魔してるよッ」 「あーらよー。よっこらしょっと。  あー疲れた」 「今お茶持ってくるね」 清香は席を外しお湯を沸かし直す。茶筒が空っぽになったようで、棚から新しい茶葉を取り出し詰め替えた。 「いま卵のタイムセールでたつみスーパーまで行ってきたんだけどさぁ、どこも糸電話の話でもちきりだねぇ」 「ハルちゃん、仁ちゃんと話したんだって?」 「あー話したよ。本人かどうか確証もないのにさ、声や話し方なんか同じだと本人なのかなって思っちゃうよね。  だってこっちが聞いたことにちゃんと答えるんだもの。どうなのかね、やっぱり本物だと思う?」  清香が持ってきたお茶を飲みながら3人で糸電話談議を始めた。 「俺ァ本物だと思う。だって弟なんて何十年も前に亡くなったのに、その当時の俺らだけしか知らないことを言うんだよ? 母ちゃんのこととか懐かしい話なんて他に誰が出来るよッ」 「おばあちゃんしか知らないことを、おじいちゃんに話して反応うかがったら?」 「そんな話なんかないわよ」 「でもよー、亡くなった人とお話しませんか、なんてキャッチフレーズで、信じる信じないは個人の自由だと言うリアルコーポレーションもうまいこと言ったもんだよな。言葉は悪いけど責任逃れ出来るからさ」 「責任逃れも何も、おじさんが話した人は亡くなった弟さんご本人なんでしょ?」 「あー、あれは間違いなく俺の弟だったよ」
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