飛ぶ鳥落とす勢い

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飛ぶ鳥落とす勢い

「ただいまー。あ、おじさん久しぶり〜」 「おー葵ちゃんかー。久しぶりだな。就活はどうよ」 「うん、まぁまぁ」 「あら葵、帰ったの?」 「うん。就活中だからゆっくりは出来ないけどちょっと寄っただけ。  それよりさ、糸電話の会社って地下にあったって知ってた?」 「地下?」 「うん、らしいよ。変わってるよね」 「葵ちゃんはその会社に興味があるのかい?」 「うん、あんな変わったものを造った会社だしね、どんなとこだろうとは思うよ」  糸電話は発売当初から爆発的に売れた。 不二リアルコーポレーションのうまいところは、信じる信じないは本人の自由ーーと謳っているところだ。  押し売りはしないし、80歳以上に無償で貸し出しするあたりは国の扱いと思わせるような優しいシステム。年配者が間違って役所に問い合わせするのも無理もない。  会社帰りの父親も、パート帰りの主婦も、塾や習い事・バイトなどの学生も、昨日までみんなの帰りがバラバラだった家族も今では〝1日1回の糸電話〟が家族を1つにする時間を作ったとも言われ、評判は上々だ。 〝不二リアルコーポレーション〟  よその国も真似できないと言われる独自のシステムを造ったこの会社の代表は、公の場所には一切現れない。これだけの人気と売上を持つ会社なのにいつも代理が対応をすることをメディアも不審がり、あれこれと詮索を始めるが何も掴めないまま。  就活を続ける葵は、初めはやりたい仕事を中心に自分の希望に沿って企業を選んでいた側だったが、それも面接5社を越えたあたりから自分の希望より入社出来るならどこでもいいと思うようになる。  そんな中、不二リアルコーポレーションという会社があの糸電話とともに突如この世に現れ誰もが興味を引く会社として一躍注目を浴びると、メディアだけでなく大勢の就活生も企業説明会や工場見学などに足を運び始めた。 葵もその一風変わった企業に足を運ぶ。  
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