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承(5)隠された入り口
大小2つの足跡を辿っていくと、十数歩先で突然途絶えた。マンモスがカンテラで周囲を照らすが、どこにも見あたらない。
ただ目の前に、高さ1メートル程の岩が鎮座しているのみである。
「さて、足跡が途絶えたわけだが、坊やはどう見るね?」
「なんとうか…その……この岩が、あからさまに怪しいです」
「はははっ、違いねぇ」
「もしかして"ヒミツキチ"の入り口なのでは?」
「いいねいいね。で、どうする?」
マンモスは自慢の怪力で押したり持ち上げようとするが、岩はびくともしなかった。
「ザックさん、降参ですわ~。これは無理ですぅ」
「じゃあ正解だ」
ザックは岩に手をかざすと呪文を唱えた。
「チチンプイプイ ゴヨノオンタカラ……っと」
すると鎮座していた岩が、音もなくフワリと真上に浮かび上がった。
「反重力魔法を応用した、鉄壁の鍵ってわけだ」
「こんな正解、分かりっこないじゃないですか~~!!」
「なに、呪文だけが正解じゃねえさ。もしかしたら坊やの怪力で何とかなったかもしれないだろ? さてと……どうしようかね」
フワリと浮かぶ岩の下には、底へと続く階段があった。しかし入り口は狭く、大の男がギリギリ入れる程だった。ザックはともかく、巨漢のマンモスが入るにはかなり狭い。
「坊やは外で待つってのはどうだ?」
そう言われたマンモスは、思わず後ろを振り返る。そこには首のはねられた大熊が横たわっていた。
「いやいやいやいや! 勘弁してください! あんな猛獣がまだいるんでしょ!! こんなところに置いてかないでくださいよっ!」
「この下にはその大熊をぶっ殺した、コワ~イお人が待ってるんだけどな」
「まだ人の方がましですって!!」
「まあいいけどよ。じゃあ坊やは最初の部屋で待ってるんだぜ」
そう言って、ザックは階段を降りてゆく。マンモスも身体を傾け、横を向きながら底へと消えてゆく。
二人の影が入り口から消えると、浮かんでいた岩が音もなく降りて行き、再び入り口は閉ざされるのだった。
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