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承(1)マンモス
月明かりが照らす中、大小2つの影が雑木林を進んでいた。
前を歩く中年男はザック。後ろを歩く若い大男は、その体格からマンモスと呼ばれていた。
キュベリがどうしてもと言うので、渋々連れて行く事にした連絡係だ。
ザックは彼に違和感を覚えた。キュベリの部下にしては大人しげで、粋がってワルを気取っているようにも見えない。
「それで? マンモス坊やはなんでまた、キュベリのチームに入ったんだい」
「へ、へい。家族がみんな死んで、独りっきりで行くところもなくて、途方に暮れていたとき、仲間に誘われまして……へい」
「流れるままに流されて、こんな吹きだまりに来ちまったのかい。まったく、政府は何やってんだろうね。坊やみたいな善人を悪落ちさせるなんてなぁ」
「それでしたら、ザックさんこそ良い人じゃないですかっ」
「はっはっはっはっ♪ このオレが"イイヤツ"と来たか。こりゃお笑いだぜ♪ マンモス坊やは人を見る目が無いなぁ。すぐに人に騙される口だろ」
「だ、だって……険悪なナンバー2とキュベリさんの仲を取り持ってるじゃないですかっ」
「そりゃあ、ファミリーには義理があるし、ジェイクの兄貴やキュベリともそれなりの仲だからな。だけどな、"イイヤツ"ってのはオレには当たらねぇ。なにしろオレは、異世界"ガングワルド"で言うところの"サイコパス"ってやつだからな」
「さ、さいこぱす?」
「おうよ。ナイフで殺して、切り刻むのが大好きな、マジもんの殺人狂さね。兄貴と出会ってなければ、片っ端から人を殺しまくって殺人犯として処刑されてただろうよ。それにボスの紹介が無けりゃ、殺しに誇りを持つこともなかった。オレが無軌道で無差別な殺しを止め、依頼された人物だけを殺すよう自制できるようになったのも、ボスのおかげ。兄貴のおかげ。仲間とファミリーのおかげよ。だったら恩返しの一つや二つしなきゃらなねぇ。そうだろ?」
「へ…へい……」
「なんにせよ、信頼できる仲間がいるってのは良い事さね」
「そうですね。本当にそうだった……です」
「だった? というと?」
「実はその、"モナカちゃん"……じゃなくて、"商品"を最初に連れ出そうとしたのが、オレの唯一の仲間で……」
「最初の裏切り者が!? って事は……」
「へい…。見せしめでキュベリさんに殺されました」
「そりゃあ……そりゃあ、悲しいな」
「へい……」
この木偶の坊の仲間が裏切り者? そんなヤツをキュベリは何故、連絡役として同行させたんだ? たまたまか? それとも何か意味がある?
いや、それよりも……。もっと大事な事がある!
「教えてくれマンモス坊や! お前さんの仲間は何故裏切った? いや、違う……そうじゃない。お前さんの仲間はどんなヤツで、裏切りに走るまでに何があった? 分かる範囲でいい。教えてくれ!」
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