月人、訪問

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「おっ、お待たせしまして……」 豊作がドアを開けると、神社の神主の様な格好をした銀髪の美しい顔立ちの青年が苛立ちを隠せない表情で立っていたが、豊作の姿を見てその表情は驚きに変わっていった。 豊作も、ドアを開けて驚いた。その銀髪二枚目男の後ろには十二単を見に纏ったかぐや姫が立っており、「ヤッホー!! おひさ〜〜!! 」と豊作に手を振っている。 何より驚いたのは、近所の人や通りすがりであろう人々が美男美女な上、目立ち過ぎる格好の2人を見に集まって来ていて、豊作の家の前に人集りが出来ていたのだ。 その中には携帯で写真を撮る者もいる。 「あぁ〜〜っ!! そんな目立つ格好で!! 早く中に入って下さいっ!!」 豊作は慌てて月から来た来客を家の中に押入れた。 2人を茶の間に通し、満佐子がお茶とお茶菓子を出してお互い向かい合って座った。 「今日は何かあるのか? 祭りか何かだったのか?」 銀髪二枚目男は2人を見ながら困惑した様子で聞いた。 それもその筈、豊作は白シャツにドット柄のスカーフを巻き、履いている白いパンツは丈を直してもらい忘れたのか何重にも裾を折り曲げていてまるで浮き輪の様になっていている。しかもまるでカウボーイの様な帽子まで被っているのだ。 満佐子はミニスカートはやめたものの、雑誌に載っていた小花柄のプリーツスカートにザックリニット、それに自分でチョイスしたベレー帽を被り、ピンクいろのアイシャドーに、ピンク色のグロスをこれでもかと塗りたくっており、まるで揚げ物を食べた後の様にテカテカしていた。 そして2人とも瞬きもせずにかぐや姫と二枚目銀髪男を睨みつけているのだ。
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