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月人、訪問
たっちゃんと飲んだ次の日から豊作はファッション雑誌を読み漁り、密かに若者向けの服なども購入したりしていた。
満佐子の化粧品も増え、怪しげな健康器具まで購入していた。
そして、どんどん2人がギクシャクしていっているのだ。
食事の時も会話がなくなり、一緒にテレビを観る事も無くなった。
結婚して四十年の間で初めて吹いた隙間風……。
2人ともこの隙間風をどうやって修復して良いのか分からずにいた。
そんな日が数日続いたある暖かい昼下がりの事だった。
「翁ーー!! 翁ーー!! いないのかーー!!」
ご近所に響き渡る様な声と共にドアを強く叩く音がした。
思わず豊作と満佐子は顔を見合わせて、
「来ちゃった〜〜!!」
と同時に声をあげた。
「ちょっ、ちょっと待ってて下さい!!」
外の来客にそう声を掛けると、2人共慌てて自分の部屋に向かった。
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