7人が本棚に入れています
本棚に追加
真相解明
しかして、現場には、架名が話した通り13人のテロリストが、あられもない哀れな姿で転がされていた。
男達は全員下着一枚の姿。女達は何故か、男から脱がせたと思われる服を顔に被せられている。相手がテロリストとはいえ、ちょっとこれはと同情しかけた一同だ。
そのある意味凄惨な現場を見て、大人達は苦笑いを浮かべた。
もう、何て言っていいのか分からない。
「架名様、何で服を顔に?」
多分、あちらで頭から服を被せられて転がっているのが女性2人だろう。ズボンの数が足らず、Tシャツを繋ぎ合わせて作ったロープで拘束されている。
大平教官が気になって問うと、架名が目で人数を確認して、一人も逃げられていないことにホッとした顔をした。
「意識が戻ったら、目のやり場に困るかと思って」
予想だにしない、思わぬ配慮がなされていた。
牧がそれを耳にして、変な所に気が回る奴だなと、呆れた顔で肩をすくめる。
暫くすると警察が到着し、本田長官が架名を連れて事情説明をした。
全員が捕らえられ、彼らが乗っていたと思われる車も見つかり、そこにあった爆弾も無事に回収された。
それを確認すると、牧がお手柄だったなと、架名の頭を撫でる。
「あ、そういや架名様、お腹、大丈夫ですか?」
大平教官が思い出して問う。そもそも、お腹を壊したのではという話をしていたのだ。
「別に、痛くはないけど・・・・・・」
架名が腹に手を当てると、大平が心配そうな顔をした。別に、顔色は悪くなさそうだが。
「拾い食いとか、してないですよね?」
拾い食い?と、架名がきょとんとした目を向けた。どうやら、自分が思っているのとは違う腹痛を心配しているらしいことに気が付く。
「してないですよ」
「3秒ルール、禁止しますから。お腹壊しそうだし」
「それは、まぁ落ちたことには変わりないだろうから・・・・・・」
洗ったら駄目なのかな、と、ちょっと心の中で思う架名である。
「それから、手、ちゃんと洗いましたね?」
「洗ったけど・・・・・・」
急に子供の躾のような話をし始めた。架名が怪訝な顔をして大平教官を見つめる。急にどうしたんだろう?と言いたそうな困惑顔だ。
そんなやりとりを眺めていた牧が、ポンと架名の肩に手を置いた。
「大平、帰ったら架名を医務室へ連れて行け。多分、怪我したんだろう」
怪我?と牧の言葉を反芻すると、大平教官ははっと架名に目を向ける。
「腹痛って、そっち!?」
大丈夫だと言い続けた架名の腹痛は、食あたりによるものではなく、殴られた怪我の痛みの方だった。
会話が成り立っているようで、実は内容がすれ違っていたという、ままある現象だ。
「ちょっと架名様、殴られたなら殴られたって言って下さい。痛くないって、あんた、怪我しても相当酷くないと痛いって主張しないし」
いつだったか、「何か痛い」と主張した時には、骨にヒビが入っていた。
宮廷専属医師の浅野先生に、いつやったんですかとこっぴどく怒られたのも、記憶に新しい。
全く、このやんちゃ息子は本当に手がかかる。牧と華菜だけでは、とても育てられない程に。
「多分、今回は骨、折れてないと思うけど」
ちょっと心配になった架名だ。怪我して痛いよりも、この大人達に叱られる方が、よっぽど恐い。
「架名、あんまり無茶しないでね」
いつの間にやら傍に来ていた未沙が、心配顔で架名を見上げた。
その優しい瞳に、架名が「はい」と微笑む。
そんな微笑ましい子供達の、優しいやりとりを見たら、怒る気も失せるというものだ。
最初のコメントを投稿しよう!