プロローグ

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プロローグ

 ―――捕まえたはいいけれど、コレ、どうしよう。  少々痛みのある腹をさすりながら、(あた)りをキョロキョロと見渡すが、(しば)れそうなものが見当たらない。  一応(いちおう)意識は落としてあるとはいえ、いつ目覚めるか分からない。更に言うなら、それで逃げられるわけにはいかなかった。  む~と考えて、ふと、足元に転がる大の字にのびた男を見た。正確には、その足を。  彼は目をパチパチと(まばた)いて、(しばら)くそれを(なが)めると、脳裏(のうり)にピンと(ひらめ)くものがあった。  ―――まぁ、仕方ないか。他に方法もないし。  ちょっと問題な気もするなぁと思いながら、捕まえたそれらを()がさない為に、脳裏(のうり)(はじ)き出された方法を実行する。  ―――怒られるかなぁ、怒られそうだよなぁ、でも他にいい方法思いつかないし。  そもそも、まず怒られるのはそこではないだろうに、彼はそこをすっ飛ばして、今実行していることで叱られる方を危惧(きぐ)していた。  ―――まぁ、これで少しは逃げられる可能性を減らせただろう。  あらかた済ませると、その何とも情けないオブジェと化した光景を眺めて、ふと、彼は紳士(しんし)的配慮が必要なことに気が付く。  ―――このままだと、意識が戻った時にこの人達、困るかな。  変な所に気が付く彼だ。  気が付いてしまったら、どうにか対策をしておかないと悪いような気がする。そう思って、彼は再び行動を起こした。 「これでよし、と」  満足そうに一人そう呟くと、再び自分の周りに目を向ける。  まだ、意識を取り戻した(やから)はいないようだ。そのことに、ちょっとホッとする。  しかし、惨状(さんじょう)は更に悪化していた。彼が気を回したおかげで、オブジェの情けなさ、倍増である。  ―――どのみち怒られるなら、早くしよ。逃げられても困るし。・・・・・・人目(ひとめ)に触れられるのも、困るし。  そう独白(どくはく)すると、彼は駆け出した。  待っていてくれるだろう、家族の元へ。
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