二章

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「……美味しいじゃん」 ガサツな味かと思ったら、存外に甘酢の味が上品でタルタルソースの酸味も程よく、ムネ肉と調和している。 「当たりめーだ。プロなんだから」 公祐が鼻を鳴らしてえばる。子供か。 「あんた、本当に料理人なのね」 「一言多いんだよ」 「ごめんて。でも本当に美味しい」 箸を進めながらふと顔を上げて驚く。公祐が、顔を付け合わせの紅しょうがのような色に染めているのだ。 「え? 照れてんの?」 「照れてねーよっ」 公祐は思い出したようにテーブル席に座っているサラリーマン達の注文を取りに行く。定食屋なんだから「美味しい」とか言われ慣れてるはずなのに、不思議な男だ。
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