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三章
11月の半ば、急な仕事でいつもより「ささき」に来る時間が遅くなってしまった。
「お疲れさん」
たまたま入り口近くにいた公祐がホッと一息つく。
「やっ。今日は忙しそうでなにより」
公祐は子供のようにちょっとむくれた顔をする。
「そーだ。もう一時間早く来い」
「しょうがないじゃない。残業よ残業」
「今日は秋野菜の天ぷら定食な」
予定と違う。
「旬のサンマが入るんじゃなかったの」
「今日のカボチャが甘かったからな」
「美味しくなかったら承知しないからね」
「ふざけんな任せろ、そこのカウンター座っとけ」
公祐はカウンターの空いてる席をびっと指差し、頭の白いタオルを結び直して厨房に消えた。
「来てくれて良かったわー。今日の公祐ずっと落ち着かなくて」
ひょっこりでてきたおばさんがコッソリと耳打ちしてくる。
「そうは見えませんけど」
「この忙しいのにチラチラチラチラ時計と玄関見てるのよ」
「! へぇー……」
なんだ。可愛いところあるじゃないか。
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