三章

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井納さんの前に食べ終わった私は、彼と連絡先だけ交換してお会計に向かう。公祐はむっつり黙ったまま機械的に会計を済ませ、そのまま機械的に私と一緒に外に出る。そして無表情のまま、ポツリと聞いてきた。 「お前あの人にすんの?」 あの人、ああ井納さんか。 「うーん、日曜日にデートするからそれから考えるけど……私ももう31だしね。結婚のこととか考えるよ、少しはね」 「お前あの人のこと大して知らないだろ」 まだ公祐は青いな。私と違って。 「知らないよ。でもこれから知ればいいでしょう……そういう付き合い方もあんのよ、大人には」 「……あっそ。好きにすれば」 ピシャッと引き戸が閉まる音が、公祐の心が閉まる音に聞こえた。
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