四章

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「あー、勿体ないことしたなぁー」 井納さんと別れたその足で「ささき」に戻ってもまだ店は開いておらず、「準備中」の札が下がっている。いいか、来週にしよ。 「初音?」 聞き慣れた声に振り向くと、近所のスーパーのレジ袋を提げた公祐がだらしなく口を開けている。 「こーすけ……よく気付いたね」 公祐はいつもより早口で私に詰め寄った。 「し……失恋か?」 デリカシーまじでないなコイツ。 「さぁどーだか?」 「こんな時間にそんなキレーな格好してこんな所帯染みた定食屋の前にいるんだからそうだろ」 決め付けるな。その通りだよ全く。 「……そうだったらアンタが今するべきことがあんだろ」 口調を真似してやると公祐はムッと顔を膨らませた。 「何だっつんだよ」 「キレーな格好したレディを前にして黙って指咥えて見てるの? この前みたいに」 「……だいたいその格好似合ってねんだよ。柄じゃねーだろ。調子狂うわ」 「ウルセェ」と思って睨んでいると、公祐は「あーあー」と謎の声出しをして、深呼吸して私を睨み返した。
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