一章

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案内されたカウンター席にどっかり腰を下ろし、ざっとメニュー表を眺めて「すいませーん!」と叫ぶ。 「カツ丼。ごはん大盛りで」 注文を取りに来たのは細身の白い調理着が似合うオヤジさんだった。 「大盛り?! けっこう多いよ?」 引いた顔をされるが私は引かない。 「大丈夫です。大盛りで」 「はいはーい」 オヤジさんは私の決意を込めた表情に何を感じたのか、神妙な顔で頷いて厨房に戻って行った。 十分くらいすると洗面器くらいのどんぶりにトロトロの卵に浸ったカツ丼が出てきて、私は箸を掴んで掻き込むようにそれを食する。 美味しい。この美味しさは、失恋なんか忘れてしまえるくらいに。
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