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さんざん大泣きをした後、もう冷めていたカツ丼の残りを食べて、お会計に向かうと公祐とやらが待っていた。
「お会計、いい」
「なんで」
「……泣かしたから。悪かったな」
「貰っておいて。馬鹿の奢りだから」
おばさんが横から口を挟む。ならいいか。
「……ごちそうさまでした」
「……また来れば」
タダ飯なのにスタンプカードにハンコまで押してくれた。
「名前は?」
「長束、長いに束、そうそれ……初音……初めての音」
彼は名前も書いてくれた。あんまり字は上手じゃない。
「初音、俺チキン南蛮が得意」
勝手に下の名前で呼ぶなし! ……まぁいいか。
「わかった次はそれ頼む……じゃーね公祐」
仕返しに私も下の名前で呼んでやった。玄関まで出てきてくれたけど、「ありがとうございます」の一言も言いやがらなかった。
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