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異世界への帰還
「おう!カヤト!宿題終わったか?」
始業式早々に、俺の学校は試験がある。だがそれも気にしていない。課題の提出の方が、俺たち高1には大切なのだ。今俺に声を掛けたのもそう言う人種の1人だ。
「もち。久しぶりだな。ケント。お前は?」
クラスでも中心にいるケントは俺に日頃から声を掛けてくる。
教室には彼1人だった。登校時間とされる時間のまだ2時間前だ。
ガリガリとペンを動かしていた彼は援軍を見つけたような顔をした。
彼とは小学生の頃からの知り合いだ。顔もイケメンで、天真爛漫な彼はいつも、女子からも高評価されている。ただし、頭の方は平均並みだ。それに、サボリ癖があるため、長期休暇の課題は終わりきっていないと言うのが毎回だ。
「どうせ分かってんだろ?‘もちろん’終わってないぜ。」
清々しいほどの笑顔でケントは俺を見ていた。こう言う時は何を言ってもムダだ。
「何が‘もちろん’だよ。ほれ、一教科2000円だ。どうせ、数学だけだろ?」
俺は彼の前の席に腰を下ろした。本当は俺に席では無いが今は関係ない。
「了。はい、2000円。数学の課題、半分ぐらいしかやってなかったんだよ。」そうやってケントは俺に数学αの課題を渡した。
それから、1時間半程俺たちは無口で課題に取り掛かった。先に終わったのは俺の方だった。そろそろ、他の人が来始める時間だ。俺は俺の席に荷物を置いてケントの課題を渡した。
「毎度あり。終わったぞ!あれ?あと2問じゃねーか。どうやら内申は守られそうじゃん。」
ケントは苦笑いしていた。
「サンキュー‼︎お前の頭は凄いね。20ページも良くこんなに早く終わらせてくれて。」
どこもすまなそうな顔をしていないところ、彼はただ楽をしたと思っているのだろう。
まぁ、俺もバイトとして行ったからなんとも思わない。ただ、テスト前のウォーミングアップだったと感じている。
そして、朝礼の数分前。クラスメイトが完全に揃った。最後の1人は顔良し、成績良し、大企業の御曹司の西園寺勘太だった。
その時だった。
教室の床に魔法陣が生まれた。
魔法陣の色は黄色。
意味は《召喚》だ。
吸い込まれるように俺たちはクラスから消え去った。
残されたのは、生徒たちの衣類を含む所持品と学校備品だった。
この生徒失踪は、日本中を騒がす大ニュースとなったが犯人すら分からないまま、捜査は打ち切りになった。
(※作者注釈カヤトがいた異世界の時の流れは私たちの世界と比べて10倍ほど遅いという過程です。
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