賢者との出会い①

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賢者との出会い①

カイさんと歩くこと暫く、前方には石で出来た壁で覆われた街が見えてきた。 夢で見たことがある街に「わあ」と声を上げると、カイさんはくつくつと笑う。 「ここは田舎でな、この世界じゃあ小さい方さ。勇者やら聖女やらが居る王都はそりゃあすごいぞ。広い大きい食べ物が何でも美味い」 「へえ、カイさんは色んなところを行っているんですか?」 「そうさな。世界を歩いて見て回って、呼ばれた理由を勝手に探してるんだが、まあ、流れの傭兵が定着しちまった。でも、歩いて来て良かったぜ、アキトに会えたんだからな」 「そう言えばどうしてあんなところに?」 「この街の自警団、日本で言うとこの警察と自衛隊が混じったような組織な、そいつらに頼まれたんだよ。手に負えないやべえ魔物が居て危ないんでマレビト様頼みますーつって? こんな時だけマレビト様扱いだかんな、4人目のマレビトは簡単にお願いしたら魔物倒してくれる便利な奴とか思われてんのさ。で、そいつがアキトのことを喰おうとしてたのだよ、間に合って良かったぜ」 「そうだったんだ……俺もちょうどカイさんの目の前で食べられそうになって良かったです」 「まあ、もう喰われんなよ。とと、待て」 門の近く、樹の影に隠れるように下がり、門から見えない角度で俺の肩をポンッと叩くと「ちょっとここで待っててな?」とウインクをするとそのまま門に向かって小走りに向かうカイさんの背中をそっと見る。 どうしたんだろうか。 門の前に立っている一人の男性に声を掛けているのが見え、2、3言葉を交わすとすぐに何かを抱えてこっちに走り戻ってきた。 「お待たせ」 「それは?」 「ローブだ、さすがにその姿は目立つからなあ。この世界に黒髪黒目の人間なんて居ないし、それに学ランも黒だろ? 真っ黒な人間を見て、この世界の人間がどう反応するか全く分からないんだ、だからこれ、被ってくれると助かる」 「は、はい」 「悪いな」 ポンチョのような形をした、麻で出来たローブを羽織るとカイさんは「似合う似合う」と笑いながらフードを被せてくれる。 「よし、じゃあ行こうか」 先導して歩くカイさんの後ろを付いて歩いて門まで近付くと、先程カイさんが話しかけた男性が笑いかけてくれた。 「寒かったんだって? 良かったな、ボウズ。カイの奢りだぞ」 「え、奢り?」 「嘘付くなよおっちゃん、無料で配布してるローブだろ」 「何でい、お前の評判落とそうとしてんのに」 「ひでえ話だな、もうおっちゃんとこの店で飯買わねえぞ」 「拗ねんなって、お前が来なくなったらオレが奥さんにどやされるだろ」 仲良さそうな2人のやり取りを見つめ、じゃあなと男性と別れ門をくぐるカイさんの後ろを追って、そう言えば言葉が分かることに気付いた。 それに気付いたのか、カイさんが肩越しにニッと微笑んでいて。 「この世界の言葉が分かって驚いてんのか? 召喚された【マレビト】は、自動的に言語が理解出来るようになってんのさ。実は俺はお前に会った時からこの世界の言葉で話し掛けたり日本語で話し掛けたりしてたけど、全部分かってたろ?」 「え、カイさん、全部日本語で話してませんでした?」 「お前の耳には全部そう聞こえてるのか。お前今、この世界の言葉で喋ってるぜ?」 「え!?」 「俺はやることが無かったから独学で覚えたお陰で日本語と使い分けたり聞き分けたり出来るが、そう言えば俺も3年前は全部日本語で聞こえてたな」 き、器用だ、カイさんってすごい人かも知れない、いやすごい人なんだけど。 「お前も覚えたら出来るようになるさ」と言われるが、英語が苦手なので多分無理だと思う。
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