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夢のようなリアル②
「──って、黙って食べられるつもりかよ!」
「グオ、!?」
死ぬ、と目を閉じた俺の耳に、モンスターの低い呻き声と、誰かの声。
恐る恐る目を開けば、大きい口と俺の間に誰かが立っている。
背中を向けられ、モンスターと対峙するように立つくすんだ緑のコートとしっぽのようになびく茶色い髪、そして紫の液体が滴る刀。
その前ではモンスターが苦しそうに雄叫びを上げ、ギョロリと見ていた目からは刀に付いてる液体を振り撒いていて。
何が、と尻もちついたままその背中を見上げていれば、前に立つその人は顔だけを横に向け、肩越しに此方を見た。
「お困りのようだな、少年」
「え……」
「ちょっと待ってな、すぐ終わらせるさ」
20代前半と見られる男性は、ニッと横顔に笑みを浮かべ、すぐに悶えるように動くモンスターに向き直る。
1度、ぶんっと刀を振れば付いていた液体は刀身から落ち、磨かれた鏡のようなその刀を彼は縦に持って。
「──はぁ!」
振り上げるように刀を一直線へと上げた、それだけの動作。
それなのに、雄叫びを上げていたモンスターは声を上げるのを止め、ピタリと動かなくなると、ズ、と左右の体がずれた。
え、と思っているうちに、モンスターは真っ二つに分かれ、痙攣する体は左右半々に倒れた。
なかなかのショッキング映像だ。
大きいモンスターを軽々と言葉の通り一刀両断したその人は、刀を鞘に戻し肩にとんっと乗せるとくるっとこっちに体を向けて再度ニッと笑う。
「よぉ、異世界楽しんでる?」
片手を上げて投げ掛けられた言葉を理解できず、俺は尻もち付いたまま、「イセカイ」と復唱していた。
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