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ストローに唇を付け、ふーっと息を吹き込む。
レインボーの、丸い丸い透明なシャボン玉。
ふわふわ飛んでは、弾けて消える。
消えてしまうと切ないんだ。
だからいっぱい吹くんだ。
小さいシャボン玉や大きなシャボン玉。
なかには吹いてる最中に、飛び立つことなく消えるシャボン玉。
消えるな。消えるな。
もっともっと、上まで上まで、青空に向かって飛んでいけ。
自由を求めて飛んでいけ。
真っ青な空に向かって、俺は白い煙を吐いた。
ゆらゆら、ゆらゆら。
シャボン玉ではなく、煙草の煙がゆらゆら。
もう、シャボン玉を吹くような歳じゃない。
煙草の煙を吐く大人になった。
大人になって、いいことってあったかな?
気がつけば、高校時代で俺は終わった気がする。
頭悪かったから、私立の不良の多い学校だったけど、それなりに楽しい青春?てやつは過ごしたかな。
そして、まともな就職もできず、プラプラとフリーターして、その後俺的に人生最悪な事件があって家を飛び出して。
家飛び出したのって、23だったな。
それからは、別に何も考えもなくて、ただ生きるためだけに働いて。
まあ、俺には合ってるのかもしれない。
いい加減で、甘ちゃんで、流されやすくて。
ひとつだけ良かったのは、人に騙されなかったことかな。
それだけは心底良かったと思うよ。
じゃなきゃ、とてもじゃないが、今の仕事できないよね。
あーあ。
でも、裏切られたことはあったか。
本気で愛した人に、裏切られた。
その時って馬鹿みたいに思うんだよね。
もう二度と誰も愛さないって。
愛さないって本気で決めたわけじゃないのに、また誰かを愛せると思ったのに。
気がついたら俺はインポになってた。
結構、繊細じゃん、俺。
それだけ愛してたんだよ。あいつを。
もう二度と愛してもらえない相手。
もう二度と愛してはいけない相手。
分かっているのに、見えないものに縛られている俺。
自由になりたい。
自由に心を開放したい。
そうすれば、シャボン玉のように、高く高く、自由に飛べるかもしれない。
でも今の俺は、すぐ弾けて消えてしまうシャボン玉。
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