さち。

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 *** 『(さち)へ。  幸、お手紙たくさんありがとう。写真も見ました。とっても大きくなりましたね。  それに、たくさん漢字も書けるようになったんだね。えらいね。幸の成長がたくさん見えて、お父さんもとってもうれしいです。  でもね、幸。  お父さんもとっても幸に会いたいけれど、会いに来るのはあと九十年くらいは先にしなさい。  幸の名前は、お父さんがつけました。  幸は、しわしわネームだ、と言ってあまり好きではなかったようだけれど、お父さん達がとっても考えて、これがいいと思って決めた名前だから大事にして欲しいです。  お父さんとお母さんにとって、一番大事なことは、可愛い可愛い娘がいつまでも“幸せ”に生きてくれること。  それ以上に、大切なことは何もありません。  だから、幸がそうであってくれるようにいのって、幸、という名前をつけました。  お前が大人になるまで、傍で見守ってやれなくてごめんね。  東京で、事故にあったりしてごめんね。  でも、幸にはわからなくても、お父さんはずっとお前のことをお空の上から見守っています。  幸が書いてくれたたくさんのお手紙も、ちゃんと読んでいます。  だからどうか、さみしいなんて思わないで。  お前はずっと、ひとりぼっちなんかじゃないんだからね。  お父さんからのお手紙は、きっとこれで最後だけれど。  でも、幸のお手紙は、ずっとずっと待っています。  また、お手紙をください。  大好きな、大好きな、可愛い幸。どうか、幸せにね』
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