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どうして、こんなことになったのだろう。
「すっげえ眺め……本当に課長が俺のチ〇コ咥えてる……」
頭上から感極まったような声が降ってきて、大きな手が楠田の頭を無骨に撫でていく。きちんと上げていた前髪がほつれて額に落ちかかる。それを、妹尾の指が丁寧にすくい取る。
お前がしろって言ったんじゃないか。と言い返そうにも、口の中が一杯だ。妹尾のものはごつい体格に見合う立派さで、勃起すると凶悪ともいえるボリュームだった。とてもではないが一口ではしゃぶりきれない。
「俺のを舐めてくれたら、俺もお返しに課長のをしゃぶってあげます」
そう提案されて、なぜか楠田は応じてしまったのだ。
「課長の口元ってエロいな、って前から思ってたんです。この口で奉仕されたら、どんな気分なんだろうって」
懇願されるように言われて、身体の芯を未知の快感が走り抜けた。図体ばかり大きい高校生みたいな奴だと思っていたこの部下が、自分のことを密かにそんないやらしい目で見ていたのかと思うと、どういうわけか無闇と興奮した。
アームレスト付きの自分の椅子に妹尾を座らせ、開いた膝の間に跪くと、それだけでひどく背徳的なことをしている気分になった。スラックスの前立てを割って取り出した妹尾の性器が雄々しく天を向いているのを見ても、欲情の波は引くどころか、さらに高くせり上がった。
草いきれのようなむっと熟れた匂いの中に顔を埋めると、妹尾が熱っぽい呻き声を上げる。
「あー課長……気持ちいいっす……」
ちゅぷ、という音を立てながら濡れた舌で軸を辿り下ろすと、妹尾の太い腿がぶるっと震える。楠田は妹尾の下着を指で引っ掛け、さらに下までずり下した。ぱんぱんに膨れた双果を指先でくすぐりながら、先を口に含んでやる。唇をきゅっとすぼめて鈴口を舌先で責めてやると、びくんと妹尾の腰が震えて、舌の上に青臭い苦みが滲む。
主導権を握っていることに気を良くしてそのまま上目遣いに様子を伺うと、妹尾は歯を食いしばるような表情でこちらを見下ろしていた。
「!」
すかさず髪を鷲掴みにされた。そのまま顔を乱暴に引き剥がされたと思うと、びしゃ、と顔に濃い液体が叩きつけられる。
「あ……くそ、この早漏め」
汚れた顔の下半分を手の甲で拭いながら毒づくと、その手首をぐっと握られる。
「課長の顔がエロすぎるのがいけないんですよ」
凄むような声も、手首を握る指の力強さも、普段の妹尾からは想像もつかない迫力に満ちていた。そういえばこいつは空手の有段者なんだっけ、と思い出す。
その気になれば、この男は自分の身体の自由を奪って強引に犯すこともできるのだ。彼の膂力をもってすれば、楠田の抵抗などあっさりと捻じ伏せてしまえるだろう。想像して、楠田は身体の奥でどろりとした欲望が揺さぶられるのを感じた。
「あっ」
掴んだ手首を引っ張り上げるようにすると同時に、妹尾が身体をひねる。あっという間に二人の位置が入れ替わって、楠田は自分の椅子の上にどさりと押し倒されていた。
妹尾が楠田のスーツを乱していく。ベルトを抜き取り、ワイシャツを引っ張り出し、スラックスのジッパーをもどかし気に下ろす。
「あうっ」
大きな手を下着の中に突っ込まれて、椅子の座面の上で楠田の腰が跳ねた。そのまま手を下方にずらされて、硬く勃起したものが弾かれたバネのようにはみ出す。
そこへ妹尾が顔を近づける。楠田の喉が鳴った。だが、口に触れる寸前で妹尾は焦らすように楠田の顔を見上げてきた。
「しゃぶってほしいですか?」
人の好さそうな下がり気味の眉も、くりっと丸い目も、顔の造りの割に細い鼻梁も大きくてよく動く口も、いつもの妹尾のものだ。だがそれらのパーツが作り上げる表情にはいつもの頼りなさは微塵もなく、ぎらつく目には獲物を追い詰める獣のような光がある。
八歳も年下のこの部下に組み敷かれているのは自分の方なのだ。その倒錯感が、強い酒のように楠田を酔わせる。
こくん、と無言のまま素直に首を縦に振る。妹尾が大胆に破顔した。
「楠田課長、可愛いですね」
――可愛い?
全身を妖しい震えが走った。
「いつものクールな課長も色っぽくてたまんないんですけど、こんな可愛い課長が見られるなんて役得っす」
「あ……ああっ」
ちろっ、と味見するかのように先端を舌先でつつかれた。背中が弾かれたように反り返る。
「ひ、ぁ」
敏感な傘の部分を舐め溶かすように、舌がくるくると動く。裏筋も唇で丁寧に辿られる。腰が砕けそうだ。だが快感が鋭く尖っていくばかりで、限界まで膨れ上がったものは一向に解放されない。
「あ、いやだ、妹尾っ……」
そんな中途半端に刺激されるのではなくて、ちゃんと達したい。楠田は椅子の上で身をよじった。
「嫌ですか?」
妹尾が楠田の屹立から口を離した。焦れる楠田の身体を食い入るような目で見下ろしながら、それでもそれ以上触れてこようとはしない。
その視線を受け止めていると、自分の表面を覆っている殻に細かな亀裂が入っていく気がする。
楠田は、雄の顔を剥き出しにする部下の顔を挑むように見上げると、自分のワイシャツのボタンに指をかけた。
「こっちも、舐めろ」
下からひとつずつボタンを外していく。前を開き、締めたままのネクタイの結び目の下までインナーをたくし上げる。
ごくり、と妹尾の喉仏が上下した。完全に捕食対象にされた気分だ。
「綺麗な乳首ですね……本当にいいんですか」
あらわになった薄いピンク色の先端を、つん、と指先で弾かれる。
「あっ……いい、から……早く」
「じゃあ、遠慮なく」
ちゅ、と吸い付かれる。舌で押し潰され、前歯で浅く挟まれ、じんと痺れる感覚が腰まで走る。豆粒のように小さなその部分に、どれだけ神経が集中しているのかと思うくらい感じてしまう。
「や、あああっ」
もう片方も指でつねるように摘まれて、楠田はたまらず、妹尾の分厚い肩に置いた両手をぎゅっと絞った。
「課長、エロい……可愛い」
可愛い、と言われるたびに、未知の感覚に屈辱がじわりと溶かされていく。
「あ、ああっ……妹尾、もっと……」
「楠田課長」
すっかり乱れた前髪を、妹尾の大きな手が掻き上げる。
「そんな顔されると、俺も我慢できないです」
「誰が、我慢なんか……しろって……」
涙の膜が薄く張った目で睨みつける。
舐めたり触ったりだけでは得られない、もっと強烈な快楽が欲しい。最後に残った理性まで吹き飛ばしてしまうほどの。
「ああ、もう」
妹尾が呻くように言うと、身を起こした。
「伝票処理、課長がなんとかしてくれますよね」
窓際の段ボール箱のところまで行って戻ってきた妹尾は、先程楠田が箱に戻したボトルを一本、手に持っていた。
椅子の前に膝をつくと、妹尾は楠田の足から革靴と靴下を恭しく脱がせた。中途半端に下ろしていたスラックスとブリーフも完全に剥ぎ取る。
「課長。脚開いて、肘掛けのところに片足ずつ載せて……うわ、すげえ眺め」
「くそ……そんな、見るな……」
「何言ってんですか。見て、触ってほしいんでしょ」
「ひぅっ」
大胆に広げさせられた脚の間にジェルを落とされた。そのままゆるりと奥まで塗り広げられる。そんなところが濡れているというのはひどく恥ずかしい感覚だった。
だが、そんなしおらしい羞恥心も次の瞬間にあえなく砕け散った。
「あ、ああっ!?」
にゅる、とぬめりを押し分けて、妹尾の指先が中に入ってくる。
「ちょ、危ないんで急に動かないでください」
「あっ……無茶、言うな……っ」
内側に与えられる刺激がこんなに響くなんて、知らなかった。太い指で中を探られているだけで達してしまいそうになる。
「あ、そこ、だめだっ……ああっ……」
腹側の一点をくっと押されると、制御できないほどの大きな波が押し寄せてくる。
「う……ああああっ」
屹立がぶるりと震える。一気に押し上げられた欲望が、先端で弾けた。
「うわ」
「あ、あっ……はぁ……」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。だが目の前の妹尾の顔に白いものが飛び散っているのを見て、直接触れられてもいないのに達してしまったのを知る。
「はは。おあいこだ」
妹尾がにやりと笑うと、上唇についた楠田の精を舌を伸ばして舐めとった。
後ろから指が抜かれる。極めた直後の震えと相まって、そんなわずかな刺激が何倍にも増幅されて感じられる。
「あ、妹尾……待て……」
「無理です。さっきから可愛い反応ばかりされて、もう理性ブチ切れです」
オフィスチェアの背もたれが、ぎし、と不穏に軋む。
「お前……さっき出したばかりだろ!?」
ジェルで濡れそぼった後孔に押し当てられたものは、先程咥えたときよりもさらに大きく、硬くなっているように感じられる。
「これだけ煽られたら即再起動しますよ」
ぐい、と一度強く押し付けられただけで、そこは先端をあっさりと呑み込んでしまう。
「うわ……課長のここ、もうこんなですか……」
ぐちっ、と潤滑剤の音が響いて、妹尾の長大なものが中へと侵入してくる。
「ああっ、や、やめろ、壊れるっ」
「優しくするよう、善処します」
「お前の『善処』なんてひとかけらも信用できるかっ……あ、あぁっ……」
妹尾が向かい合った姿勢のまま座面を跨ぎ、腰を下ろした。楠田の身体を膝の上に抱え上げ、繋がったままのそこをゆっくりと落としていく。
「ん、くぅっ」
重力に逆らえず、妹尾の楔を呑み込まされた楠田は、背を大きく弓なりに反らせた。痛みはないが、圧迫感が強烈だ。
「だから、あんまり煽らないでください」
「誰が、煽ってなんか……っあ」
前に胸を突き出すような体勢になっていたところを、つんと尖った乳首に歯を立てられた。まるで回路が繋がっているみたいに、電流のような刺激が走って後ろがきゅんと締まる。
「あ、すげっ……」
「い、あああ」
妹尾の広い背中に腕を回してしがみつく。ワイシャツの下で、逞しい筋肉がぎゅっと収縮するのがわかる。
「ああっ、揺するな……あっ」
翻弄されて、切れ長の目尻に涙が滲む。苦しいのに、おかしくなりそうなくらい気持ちいい。
「課長、中に出していいですか」
「莫迦やめろ、抜けっ……」
嫌だ、と首を左右に振るが、身体の奥はまるで離すまいとするかのように妹尾をきつく食い締めたままだ。
ふう、と妹尾がひとつ大きく息をつくと、楠田の脇に腕を回してぐいと持ち上げた。そこへ、下からありえないような強さで突き上げられる。
「――――!」
目の裏で火花が散った。体内に熱い飛沫が散るのがわかる。太い腕にぎゅっと抱え込まれて意識が白く飛ぶ寸前、耳に甘い囁きを落とし込まれる。
「課長……ホントに可愛い……大好きです」
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