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「や~…相変わらず、男にしておくには勿体ないくらいの美人だなぁ」
「あんた…それ、先生本人に言うんじゃないよ?」
皇紀に呼びかけた男性と共に畑仕事をしていた女性が農作業や手を止めて声をかけると、日に焼けた顔を顰めた男性は女性の方を向き、
「わーってるよぉ!」
と言って唇を尖らせた。
「今じゃ、軽はずみな言動はパワハラだって言われる時代だよ? 気をつけてくれないと」
「へーへー」
「…まったく」
長年連れ添った夫婦らしい会話が続いていたことなど露知らず、通いなれた道を自転車で軽やかに駆けていた皇紀は、右手に広がり始めた砂浜を見て、胸をときめかせる。
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