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「皇紀さんは相変わらず」
「…なに?」
枻斗はサーフィンボード、皇紀は自転車を傍らに持ち、肩を並べて家路を辿りながら、波音に混じるようにして言葉を交わす。
「お年寄りにモテモテですね」
「っ、枻斗まで僕のこと、『人たらし』とか言うつもり?」
「『枻斗まで』って?」
オレの他にも、誰かに言われたの? と、見下ろす眼差しに込めると、皇紀は一瞬唇を引き結んだあと、
「薬局で働いてる同僚にも、言われたから」
と吃りがちに言葉を零し、唇を尖らせた。
「ほら。 他所の人から見てもそうなんだから、いい加減認めたら」
「そうは言うけど、枻斗だってっ」
「…オレが?」
認めたらどうですか? と言わせない勢いでカットインしてきた皇紀を見ると、皇紀は夕日を映し、美しい緋色に染まる頬を俯かせ、
「この辺一体の女性たちにモテて、大変そうじゃない?」
と、囁くように言葉を零した。
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