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「…そう、だけど」
「…」
可愛いなぁ、と、拗ねる皇紀を見ている唇から零れそうになる言葉を飲み込むも、口元の笑みを隠しきれなかった枻斗は暮れ始めた空を見上げ、ニヤつく顔を皇紀の視界から隠した。
…想う気持ちを、伝えても尚。
今だに初々しい恋心が育まれ続けていることの幸福感が、四肢に染み渡って行く。
これまで辿ってきた人生の道行きは、決して平坦ではなかったものの。
それでも、こうして 。
恋した人と、穏やかな気持ちで肩を並べ歩ける日を迎えられた今をあらためて振り返ると、生きていて良かったと、その想いを噛みしめずにはいられなかった。
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