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「足りてるけど…もっと!」
「っと!」
自転車のハンドルから手を離し、両腕を枻斗に伸ばして飛びつくように抱きついてきた皇紀を受け止めながら、自転車が倒れてしまわないようにするため、空いた手でハンドルを捕まえる。
「大好き…枻斗」
「オレも──愛してる」
詰めた距離の狭間で目を合わせ、微笑みを交わした二人の顔が近づき、夕闇に沈み始めた海辺の町で、一つのシルエットになる。
──…昼となく、夜となく。
お互いを愛し合える喜びを噛みしめながら、恋に落ちた二人の姿は。
深い闇にきらきらと輝く星々の波間に、ゆっくりと。
ゆっくりと…
消えて行ったの、だった──…
END.
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