馴れ初め

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「ざまぁないですわ」 「そうですね、エリカ様」 「荒川君を傷つけたこと、後悔させてやりますわ」 「ごもっともです、エリカ様」 エリカと取り巻き達の声が聞こえたのは、放課後は誰も使わない第三音楽室だった。 「おい、エリカ」 「な、何ですの?」 「由佳の持ち物に落書きしたのはお前か?」 「何のことか、さっぱり分からないですわ」 「あくまでしらばっくれるって言うんだな」 「身に覚えないんですから、仕方ないでしょう?」 「そっちがそうなら、こっちも手段を選ばねぇ」 それだけ言って第三音楽室を後にした。 行き先は由佳を残してきた教室。 早足で戻ると、まだ由佳は床の上で座り込んでいた。 「お前いつまでそうやってるつもりだ?」 「驚いて腰が立たなくなっただけだし!」 「そこ強がるところかよ…」 「うるさい」 「で、返事は?」 「返事?」 「さっき、告っただろ?その返事」 「あっ…」 思い出したように真っ赤になる由佳。 俯いたまま、もじもじ手を動かしている。 「…いいよ」 「は?」 「だから、付き合ってあげてもいいって言ってんの!!!」 誰もいない教室に由佳の叫び声がこだました。 はぁはぁ、と肩で息をする由佳。 それすら愛おしく感じてしまう。 「ごめん。大声出した」 「いや、吃驚しただけだし。…じゃぁ、今日からよろしく」 「…うん」 落書きされた教科書は全て預かることにした。 預かっている間、教科書がないと授業に支障が出るから、俺のを貸した。 俺は兄貴がいるから教科書くらいなんとでもなるから。 家に戻って、預かった教科書を親父に渡した。 本当は子供の喧嘩に大人の力を借りたくなかったけど、今回だけは借りずにいられなかった。 親父は警察関係者。 事情を話すと、二つ返事で承諾してくれた。
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