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しだいに観念したように燈子の腕から力が抜け、暗がりにぼんやりと紅く染まった頬が浮かび上がる。沙保は邪魔な前髪が燈子のひたいに落ちるのも構わず、屈んでこめかみに口づけた。おずおずと燈子の両手が伸びてきて、沙保の頬を包み込んだ。
「……その前にもう一度キスして」
鼻先が触れ合い、小さく空いた唇がためらいがちに近づいてくる。ふにっと表面が重なったかと思うと、沙保の唇の隙間をちろりと燈子の舌先がつついた。燈子の両腕が沙保の頸に回されたのを合図に、二人の舌先は絡まり合い、濡れた唇と唇が柔らかくぶつかり合った。
触れた細胞のひとつひとつから温かい何かが広がって、全身を満たしていく。なんて気持ちがいいんだろう――。
沙保はうっとりキスを交わしながら、静かに燈子の背中に腕を回した。そして唇が離れた一瞬の隙に、長い髪に顔をうずめて囁いた。
「燈子さんの全部を見たい。いい?」
その言葉に嘘はなかった。沙保は燈子の全てを知りたかった。透き通りそうな肌の隅々までキスしてもなお、燈子には踏破を許さないところがあったから。
ねだるように下着の上から腰骨をさすると、始め横に揺れていた燈子の首の動きはしだいに曖昧になり、それからかすかに縦に振れた。まるで映画のワンシーンみたいだと、沙保はホッと息をひとつついた。
燈子はきゅっと沙保に身体を密着させると、軽く腰を浮かせた。沙保は指先に下着を引っかけ、甘皮でも剥がすようにゆっくりと太腿をすべらせた。
「……わたし、シャワー浴びてない」
「今さら?焦らしてるの?」
沙保が恥丘にちゅっと口づけてそう言うと、燈子の腰はもどかしげにくねった。
「ちがっ、あっ……もうっ」
「集中して、……大丈夫だから」
時折ひくつくそこに誘われて、沙保はあふれた蜜が前髪を濡らすのも構わず、てらてらと濡れ光る脚の付け根に顔をもぐりこませた。そのまま内腿を伝う蜜を舌先でぺろりと掬うと、燈子は甘やかな吐息を漏らした。
「んっ……む……やぁ」
「声、かわいい」
「もうっ……、ほんとばかっ」
年の離れた沙保に言われるのは悔しいのか、こんな時燈子は決まって眉根を寄せた。うっすら涙のにじんだ目に突き動かされて、沙保は逃げようとする腰を掴まえ、二対の花弁のそれぞれをそっと吸い上げた。
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