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彼女がいる風景は
──毎朝決まって見かける風景があった
それは通学中の電車から見る風景だった。毎朝決まった時間に乗る電車がとある駅に着くとその風景を見ることが出来た。
制服を着ていることからおそらく同い歳だと思われる女の子がホームに置かれている椅子に座って本を読んでいる。
停車時間わずか一分程、僕はジッとその光景を見つめた。そんな僕の視線に女の子は全く気が付かない。それはそうだろう。彼女の視線は一度も本から離れたことがなかったから。
誰も降りる人がいない駅で停まった電車は一分間、静かな空間を生み出す。
それは彼女の周りもそう。座っている彼女の周りの風景はまるで時が止まっているようだった。
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