誰かと誰かの「手紙」

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 『私』から『貴方』へ  返事を見たわ。正直いきなり貰えると思っていなかったから驚いた。  でも『お前は誰だ』はないでしょう。『私』が誰かなんて、手紙を見たらすぐに解るじゃない。  『私』を殺した上で、酷すぎる。  毎日毎日お互いの顔を見て、何度も問答を繰り返した仲じゃない。  そりゃあ、『私』の答えは『貴方』の希望に添わないものだっただろうけれど。あげく、『私』は殺されてしまったのだけれども。  あ、ねえねえ。希望に添わない、といえばさ。  駅前のモールで、今日『貴方』が眺めていた新作のアウターコート、すっごく可愛かったよね。『私』、あれ欲しいなぁ・・・て言ったら、『貴方』は絶対に拒否するんでしょうね。  『貴方』はいっつもそう。  『私』が欲しいもの、気に入ったもの、好きなもの、全部駄目。  あれもこれも、俺はあんなものは好きじゃない、好みのデザインじゃないって。  あげく、買ってくれたものといえば、すごく地味なデザイン。  全く、馬鹿にしているわ!  ああ、だから。うん、いいじゃないのよ。  可愛いものが好きだって、綺麗なものに憧れたって。だって『私』、女だし。  ごめん、今日はここまでにする。なんかちょっと冷静じゃなくなってきた。  また明日、お手紙書きます
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