プロローグ

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プロローグ

 ここは人間と妖怪が共存する江戸の町。 空には天狗が、速達の飛脚として荷物を片手に飛び交い、天女は宙を優雅に舞い、道行く人々の注目を集める。  地上に目を向ければ、化け猫や化け狐などの妖怪が、大道芸の披露をしていたり、豆腐小僧がお手製の豆腐を売り歩き、のっぺらぼうが蕎麦屋台で商売をしていた。客には妖怪だけじゃなく、人間も一緒になって、楽しそうに話ながら、蕎麦をすすっている。  今でこそ人間と妖怪が手を取り合って生活をしているが、つい百年ほど前まで、両種族の間で激しい戦が行われていた。  結果、人間は妖怪に敗北。人間種族は滅びの一途を辿ることになった。しかし、妖怪たちを率いていた鬼一族が、それに待ったをかけた。  帝は今まで通り人間だが、征夷大将軍の地位を自分たち鬼一族に明け渡すように言った。そして政治の最終的な決定権は、鬼一族が決めるという条約を提示してきたのだ。  人間種族の総大将であった帝は、滅ぶよりは良いと、その条約を受け入れた。  人々は妖怪たちに恐怖で支配されるかと思いきや、鬼たちは、決して人間を虐げるようなことはしなかった。それどころか、両種族のより良い暮らしのために、奔走した。そのおかげもあって、今は人間と妖怪が、共に暮らし、繁栄の道を歩んでいる。
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