第2話 改造人間サマーン~誕生変~

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第2話 改造人間サマーン~誕生変~

俺の名前は、佐山 直之、16歳。 少し、貧乏な生活を送っているが、ごく普通の男子高校生。 多感なお年頃である俺は、明日を夢見ていた。 明日。 俺は、ついに、長年、思いを寄せていた、憧れの女教師 佐々木 素子先生に告白するつもりなのだ。 先生は、きっと俺のことなんて、子供だとしか思っていないのかもしれない。 だけど、俺は、本当に、真剣に、先生との未来を考えていた。 その日。 俺は、深夜にバイト先のコンビニから帰宅した。 俺が、5才の時に、両親は、他界した。 以来、10才年上の兄、佐山 学が、親代わりになって俺を育ててくれた。 兄は、今、ちょっとひきこもりの科学オタクになっているが、いつか、きっと、立派な科学者になってくれると、俺は、信じている。 「おかえり、直之」 帰宅した俺を、久しぶりに見る兄貴が出迎えてくれた。 「疲れたろう。さあ、この温かいホットチョコレートを飲んで、ゆっくり、休むがいい」 「ありがとう、兄さん」 俺は、湯気のたつホットチョコレートを受けとると、ぐいっと飲み干した。 何だ? 頭が。 頭が、重い。 俺は、ゆっくりと、目を開いた。 いつもの、自分の部屋の、自分のベットの上だった。 俺は、いつの間にか、眠ってしまっていたようだ。 ふらつきながら、俺は、体を起こし、立ち上がると、制服に着替えた。 そうだ。 今日は、佐々木 素子先生に一世一代の告白をすると決めた日。 俺は、なんだか、全身に違和感を覚えた。 いつもの制服が、なんだか、キツキツだった。 ズボンも、ピチピチで、寸足らずだった。 何だ? これは。 とにかく、早く、顔を洗って、学校へいかなくては。 洗面台の鏡に向き合った俺は、叫んだ。 「なんじゃ、こりゃぁ!」 そこには。 線の細い、小柄な、美少年だった俺の姿はなかった。 そこに、映っていたのは。 決して、ブサイクでは、ないが、今までの、俺ではなかった。 どちらかというと、ワイルド系ゴリラ的なラガーマンの姿があった。 「嘘だ、嘘だと言ってくれ!」 俺は、混乱して言った。 「そう、そうだ。俺は、夢を見ているんだ」 「夢では、ない」 兄貴の声が背後から聞こえて、俺は、後ろを振り向いた。 「直之、いや、改造人間サマーン、よ」 「兄さん?」 俺は、恐る恐る、きいた。 「何を、言ってるんだ?」 「だから、お前は、昨夜、俺が、さくっと改造した。今の、お前は」 兄貴が言った。 「改造人間 サマーン、だ」 「改造人間って、そんな、冗談だろ?」 俺は、きいた。 「嘘だと言ってくれ、兄さん!」 「本当だ!」 兄貴は、言い切った。 「さあ、これから、お前は、愛と正義のために、悪の組織と戦うんだ!」 「悪の組織ってなんだよ?」 俺がきくと、兄貴は、ぷいっと目をそらした。 「今、募集中だ」 「何、それ?」 俺は、叫んだ。 「悪の組織もないのに、俺、改造されちゃったの?」 「大丈夫、だ。直之」 兄貴が、一枚の広告を俺に見せて、にっと笑った。 「早速、募集の広告を出しておいた」 悪の組織の構成員を大募集! 今なら、幹部になるのも夢じゃない。 さあ、君も、一緒に、世界を征服してみないか? 「なんだよ、この、ふざけた、広告は」 「だから、悪の組織を募集ちゅ」 俺は、兄貴を、思いきり殴っていた。 兄貴は、少なくとも、5メートルは、ぶっとんでいった。 辺りに、救急車のサイレンが鳴り響く。 俺は、兄貴の手を握って言った。 「兄さん!しっかりしろ!」 「な、直之」 兄貴が、ごふっと血を吐きながら、俺に言った。 「悪の組織の、面接は、明日から、順次していくから」 「死ね!」 俺は、もう一度、兄貴を殴り飛ばした。
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