228人が本棚に入れています
本棚に追加
写真に眼をやると、いまや鬱蒼と生い茂った草木に隠れて、錆つき、編曲した線路が無造作に山の傾斜を這い回っている。
あるいは既に原型を留めていない駅舎が、まるで恐竜の死骸のように朽ち果て、緑化し、ただそこに横たわっている。
あるいは渓流の上に架けられた赤い橋梁の残骸が、まるで廃墟の呪われた外壁のようにただそこに残存している。
僕は少し寂しくなった。米富軌道もかつては人々の貴重な足だったのに、いまではこの世から忘れ去られ、ただそこで朽ち果てている。
思えば、僕も似たようなものだ。かつてはトップ営業だった僕が、今では誰からも期待されることなく、ただここで暇を持て余している。
最初のコメントを投稿しよう!