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 後で母に聞いたところによると昭和62年の秋、僕は母に連れられて三橋町に帰省したらしい。都内で働いていた共働きの両親は多忙を極め、またお互いの休みが合うこともあまりなかったそうだ。母は山梨に帰省する際、必ず僕を連れて行った。僕が帰省した翌年、米富軌道は廃線になったので、どうやら僕がその路線に乗ったのはその時、ただ一度だけだったようだ。 僕が生まれた頃から、3歳ぐらいまで、祖父と祖母は頻繁に都内にある僕たちのマンションに遊びに来ていたようだ。 ふたりにとって初孫だった僕は大層かわいがられていたようで、後に随分とたくさんの写真を母から見せられた。どの写真を見ても破顔した祖父と祖母が喜々として僕を抱っこしていた。
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