七話:ただのウサギはステータスを見る

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七話:ただのウサギはステータスを見る

「ミーシャさん、換金お願いします」  私は冒険者ギルドに着き次第、大量に殺したウサギ達をお金に変えようとしていた。 「ルーナちゃん。別に来なくてもいいのに」 「え? どうして?」 「だって、あまり狩れなかったでしょ? ウサギ」 「そんなことないよ? 今までで一番狩れたよ」  何か馬鹿にされたような気がして、少し腹が立った。 私は少し膨れっ面になりながら、【道具袋】から、ウサギを全て取り出す。 「ほら」  受付にウサギの山が出来た。ミーシャさんの姿が見えなくなった。  でも、驚いているに違いない。だって、今まで百羽近くのウサギを持ってきたことないから。 「ル、ルーナちゃん……これ、一人でやったの?」 「うん。全部私がやった」 「そ、そう……。ゴルドスさん!」  バタバタと大きな足音を立てながら、ミーシャさんがどこかに行ってしまった。  マスターの名前を呼んでいたから、マスターのところだろう。  それにしてもミーシャさんの反応、少し大げさではないだろうか。  ゴブリンとか、コボルトなどの魔物を百体倒してきたら驚くのも無理ないけど、たかがウサギ。マスターを呼びに行くほどのものでもないはず。  でも、少し気分が良い。大物を倒してきた気分になる。とはいえ……。 「これからは自重した方がいいかな」  流石に迷惑になるだろう。ミーシャさんは私だけの受付嬢ではないし。  でも、これぐらいしないとお金は稼げない。どうしたものかな。やっぱり、ゴブリンを倒す方がいいのかも。  ゴブリンなどの魔物は、ウサギのように体ごと持って行かなくても、魔石を持って行くだけでいい。  魔物はウサギと違って食べられないし、魔石以外に価値はない。例外は勿論いるけど。 「でも、私弱いからなー」  とりあえず今のところは、ウサギを狩っていくことにした。  ゴブリンはマスターの修行で、強くなった後だ。  思考にひと段落ついたところで、ミーシャさんが帰ってきた。 「ゴルドスさん、見てください! これ、全部ルーナちゃんが倒したって!」 「ほう。……ミーシャは数を数えて、換金作業を進めろ。ワシはルーナと話してくる」  そんな話し声が受付の奥から聞こえてきた。うーん。やっぱりやりすぎたのかな。 「ルーナ、【ステータスプレート】を見せてみろ」  受付から出てきたマスターに言われた。  でも、【ステータスプレート】って何? そんなもの貰った記憶ないけど。  考える素ぶりをする私を見て、マスターは換金作業を進めろと、先ほど言ったばかりのミーシャさんを呼び出す。 「ちょっと来い、ミーシャ!」 「は、はいっ! 何でしょう、ゴルドスさん」  慌ててやって来たミーシャさん。 「お前、ルーナに【ステータスプレート】渡してないのか?」 「……言えません」 「渡してないのだな?」 「……はい」 「はぁ。【ステータスプレート】は強さの証明になるものだ。だから、冒険者には渡す義務がある。教えただろ」  何故か説教されるミーシャさん。……かなり落ち込んでいるような気がする。何か悪いことをした気分になった。 「悪い、ルーナ。ミーシャには後できつく言っておく。だが、まずは【ステータスプレート】を作ろうか」 「でも、それって高いって……」 「新人の冒険者には高いだろうが、あのウサギを換金すればお釣りが返ってくる」 「それなら、【ステータスプレート】作ります」 「うむ。なら、少し待っていろ」  そう言うと、マスターは受付の奥に消えて行った。  ……そういえば、冒険者登録をするとき、ミーシャさんから言われた気がする。 『【ステータスプレート】を作りますね』と。  でも、あのときの私にはお金の余裕が無かったから、無理言って作ってもらわなかった気がしてきた。だから、ミーシャさんは本来叱られるはずじゃなかった。後で謝っておかないと。 「悪い、待たせたか」  マスターが戻ってきた。水晶玉みたいなものを持っている。とても綺麗だ。 「早速で悪いが、この水晶玉の上に手を乗せてくれ」  三つある受付のうち、一番左の受付に水晶玉を置いたマスターが言ってきた。  ちなみに私がいつも使っている受付は真ん中だ。  私は言われた通りに水晶玉に手を置く。すると、水晶玉は輝き始めた。  その光はしばらくすると収まり、水晶玉の置き場である四角形の物体から、板状のものが出てくる。  私はそれを手に取った。少しヒヤッとしている。金属製のものだろうか。 「それが【ステータスプレート】だ」 「これが【ステータスプレート】……」  確かに文字が刻まれている。これが私のステータスなのだろうか。 「その文字に目を通してみろ」 「わかりました」  私は【ステータスプレート】を見た。 ======================================== 名前:ルーナ 種族:兎人族 年齢:16歳  《アビリティ》 攻撃:I 体力:I 防御:I 敏捷:H 器用:I 魔力:測定不能 魔防:I 《スキル》 【隠密:H】【聞き耳:I】【索敵:H】【呼吸:I】 ========================================
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