213号室の食人鬼

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213号室の食人鬼

 大切に、大切に、僕はミゲルの首にワイヤーを巻いた。  戯れにグイグイと力を籠めると、彼は覚醒し、背に乗る僕を、まるで獣に出くわしたような目で見た。 「ジョエルっ、僕に、何をして……?」 「結婚しよう、ミゲル。君こそ僕の人生における最高のパートナーだ」 「僕を殺すの……?」 「何で殺さなければならないのさ! こんなにも君を愛しているというのに!」  大切に、大切に、息の根を止めてしまわないように。  僕は心を落ち着かせて、手元が狂わないように努めた。  ミゲルが気絶すると僕は早速手術の準備に取り掛かった。  この困難を彼が乗り切れば、必ず僕を愛してくれる。  僕が電動ドリルに手を掛けたとき、アパートメントの扉がガチャンと開く音がした。  階下に面した窓から外を見下ろすと、真っ黒なミゲルが真っ裸でアスファルトに転がっていた。  昨晩キメすぎたらしい。 「君の話なんて、誰も信じないのに」  彼の代わりはいくらでもいる。  彼を処理するために、僕は重い腰を上げ、彼を追った。
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