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まえがき
天才は実在する。
それが悲しいことなのか嬉しいことなのかは定かではないが、ツチノコやネッシーと違って確実に存在する。
僕の親友がそうなのだから。
小学校からの同級生、三明解人は天才だ。
天才にも色々いるとは思うが、解人はオールラウンド的天才である。
何かに秀でて得意というよりも、凡人が100回やってできることは彼なら3回でできるようになるという驚異的な適応力。それが彼の才能だ。
『なんでも上手くやる器用な奴』の最強版だと思ってくれればいい。
小学三年生の夏。
凡人の僕はそんな天才に魅了され、今となっては7年の月日が経つ。
僕たちは普通に青春を迎え、天才に至っては春が訪れ、凡人のように告白の練習に付き合わされたりもした。
そしてその恋は見事に成就し。
天才は今日も春を謳歌している。凡人にはまだその兆しはない。
……別に羨ましくなんてないよ?
告白の成功はめでたいことだし、親友の笑顔が増えたのは喜ばしいことだ。会話の中に『終野結子』という名前が事ある毎に出てきたり、どこかへ遊びに行く度に気付くとお土産を購入していたりすることに不満を感じるわけがない。
僕は解人の親友なのだから。
親友の幸福は僕の幸福でもあるといえよう。
「……問也、相談がある」
昼休みの最中、ひいては世界の平和は僕の幸福、という境地まで至ったところで、教室の扉が開く。
そして入ってきた解人は眼鏡のブリッジを指で押し上げながら言った。
「ラブレターを書きたいのだが」
「お前彼女いるだろうがふざけんなクソヤロー!!」
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