パートナーを得た

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パートナーを得た

 ケイは洞窟に着くとホーンラビットの逆さに吊るし、血抜きに入る。そして、火をおこす準備をする。  そのために、また外へ出かけようとすると、尻尾をフリフリと動かしながら物珍しそうに見えている狼少女がいた。 「……何故いる?」 「…付いてきた」  ケイは、狼少女の返答に思わずため息を吐き出した。  着いてこられていることに気が付かない自分自身が確かに悪いが、こうして隠れ家まで見つけられてしまうことが、ケイにはとてつなく最悪だった。 「まさか、住まわせろとか言うんじゃねーだろうな?」 「……住まわせて」 「……ダメだ」  ケイは知ってる、そして理解もしている。だからこそ巻き込めないのだ。捨てた奴らに復讐するのはケイの問題であって、狼少女の問題じゃない。だから、巻き込めない。  同じ捨てられたもの同士、状況は違えど、立場は同じ。だから、相手の思っていることもそれとなく理解してしまう。  だからもし、許してしまったら、その時は十中八九巻き込んでしまう。その心が、ケイを狼少女から引き離す。そして、薪を探すために狼少女の横を通り、まっすぐと樹海を歩む。  ある程度歩いて、日光がよく当たる場所に着くと、干からびた葉や枝や薪を拾い集める。この時もしっかりと付いてきていた狼少女もケイと同じような物を拾い集める。 「……何してるんだ?」  怒られていると感じたのか、狼少女は少し弱気な声で答える。 「……てつ……だう」 「…………」  ケイは何も見ていないようなフリをして、住処へ帰る。もちろん、狼少女もあとを付いて行く。  洞窟内で枯れた枝と枝を擦り合わせて摩擦で火種を作り、燃えやすい物に移して空気を送る。そして、徐々に大きい物を積んでいき火を大きくする。 「凄い……」  狼少女は拾い集めた物を足元に置いて、洞窟の外からただただケイの作業を見ていた。  ケイは知らぬ振りをかまして、血抜きが完了していたホーンラビットの肉に太めに木で刺して、火の上でこんがりと焼いていく。  その時、雨が降ってきた。次第に強くなり、ますます強く雨が降る。それでも……それでも狼少女は洞窟の外から動かない。  それどころか、ケイが与えたカッターシャツを脱いで、しゃがみこんで、胸の内側に隠すように、濡れないように守っていた。 「あいつ……」  外は豪雨と暴風で危ない。そんな中、けいは見てしまった。狼少女が涙を流す姿を……。 「…………はぁ、全く……」  そして、この瞬間、ケイの心は狼少女を許した。いや、許されざるを得なかった。 (涙は反則だろ……。女の子が涙を流しているのに、見て見ぬ振りができる男がどこにいるんだ?)  要は男としてのプライドがケイの心を動かしたのだ。そして、狼少女の元へと足を運び、大事に抱えていたカッターシャツを強引に取る。 「あっ!」 「何をしている……早く入るぞ」 「……いい…の?」 「ここに居るよりかはよっぽどましだ」  この日、ケイは共に生きることを誓い、最愛にして、最強のパートナーを手に入れた。
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