世界は残酷だ

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世界は残酷だ

 この世界のルールは簡単である。それは弱肉強食。つまり、強い者が生き、弱い者は死ぬ。  (殺せ、殺せ、殺せ、殺せ……でないと、死ぬのは俺だ───────俺が生きるために目の前の敵を殺せ!!!)  この世界に来て、(けい)が初めに思い知ったことだった。  右手には、握りこぶし程の手頃な石。地面には、頭を砕かれ、ぐちゃぐちゃになった頭から角の生えた兎もどき。脳を潰してもまだ少しばかりか足がビクビクと痙攣している。つまり、その兎はまだ少し生きていた。 「殺す……さぁ、飯の時間だ……」  何度が石を打ち付けて、ようやく兎もどきの動きが止まった。蛍は兎の血抜きや毛剥ぎ、内臓の処理などが完了していないにもかかわらず、無我夢中で噛み付いた。何しろ5日ぶりに食べてた飯なのだ。空腹は既に限界を超えていた。兎の血が、肉が、蛍の胃袋を満たしていく。  降ってきた雨の水を土を掘ることで貯めた泥水を啜る。急に食べ物を入れたせいか、それとも普通じゃない兎を食べたせいなのかどちらかかはわからないが、胃が受け付けない。吐き気を誤魔化すためにさらに水という名の泥水を啜る。 「うっ!?……うぇぇぇ……お、お、おぇぇぇぇぇぇぇえっ!!」  少し戻した。毛や血や肉が口から少し溢れ出た。それ見て蛍はなんとも思わない。いや、思えなくなった。むしろ少し勿体ない気もしている。なぜなら、今この状態が全てを物語っていた。  蛍は普通の高校生だった。何不自由なく、友達もおり、自宅に帰ると温かいご飯やお風呂、ベットがあり、当たり障りのない普通の生活を送っていた。……送っていたはずだったのだ。  今より10日前、6時限目のホームルームが始まると同時に、教室に巨大な魔法陣が現れた。魔法陣はクラス全員の足元に現れると、生徒の体を足から消して行った。  逃げようとしても、体が動かず、声を上げれる程度だった。そして、魔法陣はわずか、5秒で教室全員の体を消した。
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