念には念を

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念には念を

 ユイがホワイトトロルコングを攻撃し、怯ませている隙にケイは湖から這い出でる。  スボンが水を含んでいるため動きずらく、重いため、がに股のような歩き方になるっているのを無理やり力技で普通に歩く。 「待たせたな、ユイ」 「ん……ケイ、手伝って。コイツ、やばい」  ユイはホワイトトロルコングからすぐさまに後退し、ケイと合流する。  ホワイトトロルコングはまたしても雄叫びを上げ、体から水蒸気を発した。全身は赤くなり、体には魔物特有の淡い青色の線が全身を張り巡らせている。  そして、ユイが付けた傷が見る見るうちに治っていく。 「なるほど……これからが本番ってか?」 「……勝てるの?」 「……あぁ、勝てる。しかも、勝負は一瞬で決まる」 「!!……やっぱり、ケイは凄い」 「まぁ、半分賭けだがな」  ケイは持ってきたホーンラビットの角を持ち、槍を持つように構える。そして、作戦をユイに伝える。作戦を聞いたユイは一瞬戸惑った表情を見せたが、覚悟を決めて頷いた。  その間にホワイトトロルコングは傷を癒し、目標を正確に見つめ、走り出しの体勢を取っていた。 「「「……」」」  3者が共に見つめ合いの中、風が吹く。風に乗って落ち葉がヒラヒラと落ち、地面に着いた。その瞬間、ホワイトトロルコングは勢い良く走り出し、猛スピードでケイ達に迫っていく。  ケイとユイは、ホワイトトロルコングがギリギリ到着する直前に、左右に2手に分かれて、挟み撃ちにする。ホワイトトロルコングはケイの予想通り、まずはユイを狙った。 「グォオオオオ!!」  ホワイトトロルコングは両手を重ねて、振り下ろす。地震のような揺れと、衝撃波がホワイトトロルコングの先に広がり、辺りをたった一撃でぐちゃぐちゃに壊してた。地が割れ、大木に巨大な根が何本か剥き出しになってる。  標的となったユイは、攻撃が当たる直前に飛び、ケイと同じところにいた。 「グォオオオオ!……オ??……ウホッ??」  ホワイトトロルコングがそれを見逃すはずがなく、振り返ろうとするが足が動かなない。それどころか、膝から力が入らないかった。 「グォオオオオ!!」  ホワイトトロルコングが力技でなんとか振り返ると、そこ居た。  ケイは肩にトントンと当てているホーンラビットの角の先には、たっぷりとホワイトトロルコングの血がついており、ユイはケイの左腕にビシッと、恋人みたいに捕まっていた。 「どうだ? 膝裏を切られて、足の感覚を失った感想は?」 「グ、グォオオオオ!!」  ホワイトトロルコングは再び、体から煙を出して膝裏を治す。  ──が、それをケイとユイは許さい。ケイはホーンラビットの角を上手く使い、無数に分かれた角の先をノコギリの様に引いて浅い傷を、ユイは『空爪』を使い深い傷を3本作っていく。 「グォオオオオ!!…………グォオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」  悲鳴の様な咆哮と共に、ホワイトトロルコングは決死の覚悟と持て余す最後の力を振り絞って、連撃を交代で繰り出す目の前の2人に突っ込む。  ──だが、ここでもまた、体が動かない。 「ここまで体力を減らせば、俺の『威嚇(中)』は使えるんだな」  ケイがホワイトトロルコングの動きを見て、技能を繰り出していた。そして、またしてもユイが『空爪』を発動し、前のめりになっているホワイトトロルコングの両目に深い傷を作る。 「……うるさい」 「どうだ、ボス猿? 痛くても、目が防げねぇ気分は?……終わりだ」  ケイは、膝裏を傷つけられ、両目を潰され、四つん這いでようやく同じ高さのホワイトトロルコングの口にホーンラビットの角を向け、力技で思い切り差し込んだ。  ホーンラビットの最先端はホワイトトロルコングの心臓をいとも簡単に貫き、腹から出てきた。 「……ケイ」 「わかってる……まだだ」  それから、念には念をと。ケイはホーンラビットの角の1番下の角が長くて張り切らなかったので、そこを持つと反転させ、無数にある棘の様な角をホワイトトロルコングの内蔵を全て傷つけた。  そして、引っこ抜き、一緒に出てくる内蔵や血を振り払うと── 「……飯の時間だな」  いつも通り、頭に角を刺して完全なる生命を終えた。
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