ママに挨拶!

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ママに挨拶!

「そう言えば、ユイ」 「……なに?」 「ここで1番強いやつって誰だ?」  ケイの単純な疑問だった。ここ、奈落の底で1番強いやつを食べれば、ユイに追いつける。ユイの隣にいてやれると思い至った。  そんなケイを気持ちを知ってか知らずか、ユイは顎に手を当て、首を傾げて、「……ムム〜」と唸り声を鳴らしながら悩んでいる。 「……ママ?……いや、やっぱり……」 「?」 「……ん、やっぱり魔王様」 「魔王?」 「そう、魔王。この世界の主様」 「……ふぅん、会ってみてぇな」 「会えるよ?」  ユイは洞窟を出て直ぐに指を指す。指した方向は洞窟の上に続く果てしない平原……の先にある山の頂上。そもそも、ケイ達が今住んでいる洞窟は、森林と平原の間に出来た断層に出来た小さな穴なのだ。 「……遠いな」 「……ん、遠い。ここから半年ぐらいかかる」 「半年か……」 「……行く?」 「……あぁ、行く。俺には目的があるからな。今のままじゃ、ダメなんだ。……ユイはどうする?」  ケイの質問に、ユイは少し悩んでから結論を出した。 「……ママに会って挨拶したい。付いていくのはそれから……で、いい?」 「ん、あぁ、いいぞ」  方針が決まったので、ケイ達は森林に向かう。ケイは普通に歩く──はずなのだが、ユイが恋人のようにがっしりと腕を組み、引っ付くので歩きずらい。  それに対して、ユイはご機嫌なのか、尻尾をゆったりと振りながら、幸せを噛み締めるように歩く。決して顔には出さずに。 「……ユイ」 「……ん」 「近い。そして、歩きずらい」 「……ケイ、迷子になる。だから、離さない」  絶対に離さないと思われるほど強烈にしがみつく。右腕に柔らかい胸が当たるが──ケイは顔には出さずに、歩き続ける。決して顔には出さずに。  テクテクと歩き続けて、日が落ちてきたので、ケイ達は休息として休める場所を探す。沢山生えている大木の根に僅かな人が5人入れるほどの空洞が出来ていたため、本日はそこで休める。 「……そろそろ服が欲しいよなぁ」 「……ケイ、服って何?」 「ん? 今、ユイが着ているようなやつだ」 「……これ、作ると嬉しい?」 「あぁ、あったら何かと便利だからな。あ、魔獣の皮で作れば良かったのか……」  ケイは持ってきた背負って持ってきた毛皮を加工する。もちろん、隣にはユイがいる。そして、幸いなことに近くには湖があるので毛皮を持っていく。まずは、乾燥しているホワイトトロルコングとホワイトモンキーズの1匹の毛皮を水に浸すことで元に戻す。  そのあとは内側に着いている皮下脂肪などを石などを使って取り除く。こっそりと夜の修行で見つけたミョウバンの結晶と近くで見つけた塩の結晶でなめしを作り、これに1日漬ける。 「……ケイ、これは?」 「これをしないとフサフサになんねーの」 「……フサフサ……」  着くまであと10日程だそうなので、のんびりと行く。今日のご飯はホワイトトロルコングの肉だ。今回は塩の結晶の残りを全部使って、一緒にじっくりと焼いていく。 「……美味しそう」 「あぁ、楽しみだ」  こんがりと焼きあがったので頂く。そしていつも通り、自己進化は来た。夜な夜な修行で食べる魔獣とは違い、激しい自己進化でケイは倒れそうになるのを食い止める。気力を振り絞って、水を流し込み、再生を引き起こす。 「はぁ……はぁ……危なかった……」 「……どう?」 「あぁ、技能を手に入れたぞ!」  名前 ケイ  種族 半魔人  称号 『暴食者』『奪う者』  技能 『異世界翻訳』『鑑定』『威圧(中)』『捕食』『精密射撃』『怪力』 「「……」」 「……『怪力』……か。魔法が使いたかったな」 「……ファイヤ」  ユイが、手を前に突き出すと火球が生成され、森林に向かって解き放たれた。それを見たケイは急いで鑑定眼で確認する。  名前 ユイ  種族 フェンリル(人狼種)  称号『魔族の嫌われ者』『魔族の迫害者』『恋する乙女』  技能 『悪食』『空爪(小)』『気配察知』『全魔法耐性』『気配隠蔽』『全魔法使用可』 「「……」」 「……あ、その……ケイ……」 「……まぁ、頼もしいぜ」 「……うん」  ケイはこの日、泣きながら寝た(修行して)。そして、ユイも今日だけは気まずいのか、少し離れて寝た。
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