すれ違い

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すれ違い

「さて、服も作った、土器もある、食料は充分。さて、行くか」 「……ん!」  服を作ったことにより、少し時間を食ったがテクテクと移動していく。ユイの話から計算していくと、残り2日程で着く程だった。そして、テクテクと歩き、日は再び傾いてきた。 「なぁ、ユイ。ユイはフェンリルだよな?」 「……うん」 「だったら、親はユイより強いのか?」 「……たぶん?」  今のユイは技能だけならチート並に強いが、純粋な力や速さといった身体能力は全て上回っているとケイは見積もる。  ユイは、こう見ても人狼の中でも極めて異質で、人の姿で生まれたからという理由だけでなく、同族からの追放されるほどの”強すぎる”実力を兼ね備えている。  言わば、「ヤバいから一緒には居られない」の部類に入るのだ。  ──つまり、 「はぁ……ホワイトトロルコングより強いのか」 「……ケイ、もしかして食べようとしてる?」 「? あぁ、そうだが?」 「……ダメ!」 「…………ユイ、言いたいことはわかるが、俺にだって──」 「ダメ! お願い、ケイ。家族を食べないで……」 「……」  ユイのいつものお願い。ケイに真正面から抱きついて、若干頭を埋めてる。そして、ユイはちゃっかりとケイの匂いをすぅーと嗅いでから、上目遣いをする。 「……それは」 「……お願い……家族は殺したくない……」 「……? 何言ってんだ?」 「え?」 「え?」 「「???」」  2人の頭の上に「?」が浮かび上がる。お互いに意図が伝わっていないのか、順に説明していく。そのために1度、ユイは距離をとる。そして、お互いの意味をゆっくりと話合う。 「……ケイは私の家族も食べるんでしょ?」 「あぁ、食べるぞ?」 「……私の家族は殺さない」 「殺さないぞ」 「……え?」 「なんで、ユイの家族を殺さなきゃいけねぇんだよ?」 「……だって、だって」 「って、おいおい! 泣くな泣くな」  ユイは目に涙を貯めている。さすがに追放されたとは、ユイにとっては仲間であり、追放される前までは苦楽を共にすごしてきた家族なのだ。一族からは追い出されても仲の良かった者は多くいる。  そこにケイが食べると言った時、殺されたと思ってしまった。という事だった。  こうした話をしている内に日が傾いて来ており、もうすぐ暗闇に入る。何も見つからないので、今日は大木の下で寝ることにした。ケイはユイを引っ張り、目を拭きながらユイは引っ張られる。  ケイが大木を背もたれにしてあぐらをかくと、泣き止まないユイが自然とその上にストン乗ってきた。 「……ヒック……ヒック」 「殺さないから……離れろ」 「……や!……ケイ、撫でる!」 「はぁ……はいはい」  ユイは、このにはもうほとんど泣き止んでおり、ケイに頭の上を撫でられるのを堪能している。その証拠に尻尾はフリフリとしており、もうほとんど体を寄せている。撫でられるためだけにずっとケイの上に座っており、次第にユイは泣き疲れて寝たのか、寝息を立て始めていた。 「……これでも家族思いなんだな」  今日の夜はさすがに動いたらまずいので、今日の修行を辞めた。
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