子供の作り方

1/1
前へ
/69ページ
次へ

子供の作り方

 未だにケイとユイの父親が、ユイを巡って争っている間、当人のユイと母親はさらに親子トークならぬガールズトークに勢いを弾ませていた。 「……なら、ユイはそろそろ婚約状態かしら?」 「……? ママ、婚約ってなに?」 「そうねぇ〜。簡単に言えば、お嫁さんになる事かしら?」 「!!……お嫁さん……お、お、およ、およめ……さん!?」  ユイは「お嫁さん」という言葉に反応し、頭の中でケイを思い浮かべる。ケイの胸の中で、力いっぱい抱きしめられるという妄想が、ユイの思考を加速させ、止まらない。  そして、速すぎた思考は「幸せな妄想」という形でゴールを見つけ、思考が完全に停止した。 「あらあら〜顔を真っ赤にしちゃって……まだまだ初ね。これからなのよ?」 「ふぇ〜」  ユイの母親は、妄想で幸せそうな愛娘にさらに追い打ちをかけていく。 「ふふっ……じゃあ、そろそろ子供の作り方を教えておきましょうか」 「……え? こ、こ、こ、こ、こ、子供!? ケ、ケイとの……子供……ふ、ふふふ、ふへへへ……」  ユイの今の顔は、ニヤニヤし過ぎたのか頬が緩んでおり、はしたないという言葉が似合うほどにまでユイの顔は酷かった。 「そうよ。あなたはまだ何もしならいお子様。だから、今から子を成す術を教えるわ!」 「……ママ! そ、そんなの、まだ早い!」  この時、結は既に茹でダコのように顔を真っ赤にさせていた。 「いいえ、聞きなさい! まずは彼の服を脱がして、雄には必ず付いてある物を暴走させるのよ!……って、ちゃんと聞きなさい! ユイ!」 「ふにゃぁぁぁ〜」  ユイはその場で倒れた。ユイの母親は、頭が完全にショートしているユイの頬を柔らかな肉球で叩き起す。 「起きなさい、ユイ。いい? あなたはもうすぐ魔物特有の発情期が訪れるのよ? そんな時、どうすればいいかわからなかったら恥ずかしいじゃない……」 「……むぅ、た、確かに」 「だから、よく聞いてなさい。その後はユイの1番大切な場所に─────して、───してもらって、最後に────してもらうのよ」  ユイの母親は、周りには誰もいないが念には念をと、ユイだけに聞こえるように顔を近づけて、大事な所だけをボソボソっと話す。  それを聞いたユイは、再びショートを起こしそうになるが、2回目なのか何とか振り切る。 「!?!?!? え、そ、そんなこと!……そ、そ、そんなに激しいの?……あ、ママ! そ、その……」 「ハッキリしないわね……どうしたの?」 「……そのママとパパはしたんでしょ?……ど、どうだったの?」 「それはもちろん……そうね。内緒よ」 「…………むぅ」 「ユイもいずれは経験することなのだから、その時、あなたが感じたことが私と同じ気持ちよ」  ユイは、体を預けるように母親に寄せる。  母親の話を聞いたユイの目線は今、必死に戦っている1人の男に向けられている。その戦う姿に、ユイは無意識のうちに再び頬を赤くしていた。  そして、何かを悟ったようにユイの母親は、抱きしめるように体を丸め、ユイに語りかける。 「……彼が好きなのね」 「…………うん、ケイが好き」 「そう。もう、あなたも彼もここには帰ってこないんでしょ?」 「なんでそれを!?」  突然の発言にガバッとユイは起き上がる。だが、ユイの母親は微笑んでユイをじっと見る。 「あなたの母親ですもの。それぐらいわかるわ」 「……ママ」 「ユイ、これを食べていきなさい」  ユイの目の前に出されたものは、赤く光るビー玉程の小さな玉だった。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加