得た能力

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得た能力

 フェンリル達と離れた、その晩、ケイ達は今日も野宿をして夜を過ぎるのを待っていた。場所はいつも通り大木の根元。  枯れた木の枝や落ち葉を使って焚き火を起こす。フェンリルの戦闘で体力が消耗したため、喉には何も通らなかった。 「いやぁ〜、参った。まさか『怪力』を使って倒れない奴がいるとは思いもしなかった」 「……ケイ、約束と違う」 「いや、しっかり守ってるぞ。殺してないし、倒してない」 「……それは…そうだけど……むぅ」  ケイが足を組んで座っているその上に、当然のようにユイが座って、ユラユラと揺れている炎を見つめながら会話している。 「しっかし凄いな、ユイの親は〜」 「……ん、ママは凄い」 「あれ? 父親は?」 「……パパ嫌い。なんか、嫌」 「不憫だな……。あ、そうだ。あれだけの痛みを感じれたんだ。技能が増えてるだろ」  ケイは首元に掛けている、プレートをユイにも見えるよう、足元まで下げてプレートに記載されている自分の全てのステータスを見る。  名前 ケイ  種族 半魔人  称号 『暴食者』『奪う者』  技能 『異世界翻訳』『鑑定』『威圧(大)』『精密射撃(中)』『怪力(中)』『捕食』『再構築』 「「……」」  互いに見つめ合って、ケイだけが軽く「……ハハッ」と笑ったあと、もう一度見つめる。 「……」 「……ん、ケイ。元気だして」 「いやいやいや、これはさすがに。……萎えるわ。そういうユイはどうなんだよ。なんか強くなったんだろ? 死にかけるぐらい苦しんでたし」 「……ケイのキスで治った。ケイ、もう1回……しよ?」  ユイは1度したことに自信を持ち、上目遣いでお強請りしてくる。ケイは自分だってしたいが、グッと堪えている。  こう見えても中身は思春期真っ只中の高校生だ。あれやこれやとしたい気持ちは大いにあって、是非とも出来るなら最後の最後までしてみたい。が──、 「……ダメだ。あれは応急処置だ。それに──」 「? それに?」 「……ユイを死なせたくなかった」  ユイは自分の胸がキュンと締まるのを感じた。それが何なのかは今は、まだわからない。だが、確かに言えることが一つだけあった。 「……ん、ありがとう………………好き」  見つめていると目の奥が、胸の奥が熱くなり、ユイの口から不意に出た言葉だった。  最後の言葉はボソッと呟いたせいでケイには聞こえていなかったが、もう一度言おうとすると、口からは出ない。 「……あ…ぅ……す、す……」 「どうした?」 「……す、す、スッ……あ、私のステータスは?」  ユイは試しに言おうとするが、ケイを見つめると、どうしてもたった2文字の言葉が出なかった。バレないように無理やり話を変え、ケイの気を逸らす。  一方、ケイも思い出したのか、言われた通り、『鑑定』を使って、赤い右目でユイを見る。  名前 ユイ  種族 フェンリル(人狼種)  称号『フェンリルの愛子』『勇者の力を受け継ぐ者』『恋する乙女』  技能 『悪食』『空爪(大)』『咆哮(中)』『気配察知』『気配隠蔽』『全魔法使用可』『全魔法耐性』『技能自動発動』『創造魔法』『限界突破』 「はぁ〜。相変わらず、えげつねぇーな」 「……ん、技能は増えた。『創造魔法』は便利そう。あと、力も前より上がった」  ユイは軽く石を持って、ヒョイッと向かいの大木に向かっていた投げる。すると、投げた石は、自然の法則に従って落下していく。問題はぶつかった大木に穴が空いていた。 「……ん、こんな感じ」 「…………相変わらず、チートだな。もう、俺なんかいなくてもいいんじゃねぇーか?」 「や! ケイと一緒がいい。ずっと一緒!」  ユイは、ギュッとケイを抱きしめる。あの日、1人だった自分に居場所を与えてくれた恩人に、何よりも好きで、たまらなく愛しい人が離れないように、どこにも行かないようにと。 「わかった、わかった。どこにも行かないから。その回してる手を離せ」 「……それも嫌。今日はこのままがいい」 「はぁ、全く……」  ケイは自分の発言に少しばかりの後悔を覚えつつも、胸の中で安心して目を閉じる1人の少女の頭撫でて、この日、自分の心身の弱さを再確認した。
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