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一呼吸おいて答える。
「大黒さんの手紙なんて読んでない。捨ててはいないけど・・・」
母の小さなため息。
「一度会ってちょうだい。
よくふたりで話し合うこと」
母の口調が鋭い。裁判のときみたい!
「青涼入るなら力になりたいと言ってる」
「大黒さん、忙しいんでしょう。
警察庁特別捜査部大阪支局の捜査員なんだから・・・
新しく設立されたばかりで忙しいって・・・
警察庁のヨシ君にも聞いたけど、未来の幹部候補だって・・・」
母が黙ってる。
ぼくも沈黙する。
強い風が吹きつけた。
もう一月なんだもん・・・
「よく知ってるね。麻衣ちゃんのこと・・・
ヨシ君にもいろいろ聞いたんだね」
ぼく、なにも答えられない。
「麻衣ちゃんに話しておく」
母の言葉が鋭い。
「麻衣ちゃんなんかに言わないで・・・」
電話が切れた。
ため息・・・
カバンから封筒を取り出す。見覚えのある筆跡。
封筒の中に一枚の写真・・・
警察庁特別捜査員。かっこよくグレーのスーツを着た麻衣ちゃんの写真。
写真なんか送らなくていいのに・・・
大阪から東京まで新幹線で三時間。
すぐ来ることできるのに・・・
ぼくの憧れた正義の味方って・・・
もういないんだ・・・
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