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ぼく、そっと太い楓の木に体をピッタリくっつけた。
楓の木から、五十メートルくらい離れたところ。
畳四畳くらいの空地。
木の間から人の姿が見える。
詰襟の学生服を着た男子。たぶん高校生だ。前のボタン、ぜんぶはずしている。
不機嫌に前見てる。
すぐ横にセーラー服の女子。同じく高校生・・・
濃い化粧してイヤリングしてるのが見える。
隣の男子にもたれかかってる。
「春日高校二年六組の山口君に平松さん」
二十メートルくらい正面に、紺のブレザーにスカートの制服を着た三人の女子。
男女のカップルと三人のグループが向かい合って立っている。
眼鏡かけたセミロングの女子が声をかける。
落ち着いた雰囲気。だけど目つきが鋭い。少し長めのスカートに黒のタイツ。
緊張した空気。楓の木まで伝わる。
「おい!てめえ!なんで知ってる」
山口さんが驚いた表情。
「フルネーム言おうか?
住所とか家族の名前まで・・・
みんな言えるよ」
眼鏡の女子が一歩、前に出る。
スカートが揺れる。細くてスラっとした脚。
「わたし、大澤。右が三杉。左が美柳」
三杉さんも美柳さんも背が高くてキラキラ美しかった。短めのスカートから黒のハイソックスを履いたスラリとした脚。
美しいけど、なんで怖い顔してるんだろう。
ふたりの目って、山口さんと平松さんに向けられてる。
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